研究課題/領域番号 |
14J04370
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
古川 真理 神戸大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 神経RNP顆粒 / 網膜神経節細胞 / 神経分化 |
研究実績の概要 |
私は網膜組織においては神経節細胞特異的に発現するRNA結合タンパク質HERMESの機能について、マウス網膜由来培養細胞RGC-5を用いてアポトーシス制御の観点から解析を進めてきた。その過程でHERMESタンパク質が細胞質に局在して顆粒を形成することを見出し、またHERMESとともに顆粒を構成するタンパク質としていくつかのRNA結合タンパク質を同定した。RGC-5細胞は非選択的PKC阻害剤スタウロスポリン(STS)やヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の刺激によって神経細胞様に分化する。HERMES顆粒の構成因子は化合物刺激によって神経様に分化したRGC-5細胞(以下分化した細胞)と未刺激の細胞(以下未分化細胞)で異なっており、分化した細胞ではパラスペックルの構成因子として知られる核内RNA結合タンパク質NonO、PSFが細胞質に移行してHERMESとRNAを含む顆粒(リボヌクレオタンパク質顆粒、以下RNP顆粒)を形成することを見出した。この顆粒は神経突起にも局在した。一方でストレス顆粒の構成因子であるG3BP1は細胞の分化状態にかかわらず常にHERMES顆粒に含まれた。分化した細胞の細胞質に形成されるHERMES、NonO、PSF、G3BP1を含むRNP顆粒は、ストレス条件下においたRGC-5細胞やSTSで刺激したHeLa細胞では形成されず、またキネシン分子モータータンパク質と神経突起で共局在したことから、神経突起へのmRNA輸送や局所翻訳を制御するために神経細胞特異的に形成される神経RNP顆粒であることを提唱した。この成果は全て私が解析を行ったものであり、筆頭著者の論文としてGenes to Cells誌に掲載が許可されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで不明であったHERMESの分子機能を明らかにするとともに、HERMESが網膜組織においては神経節細胞特異的に発現することの生理的意義の解明の糸口をつかむことができた。私は、神経節細胞ではHERMESが神経RNP顆粒にリクルートされることで、HERMESとの相互作用を介して顆粒に取り込まれるRNAやタンパク質の構成に神経節細胞特異性が付与されるのではないかと考えている。またこれまでの成果から、HERMESを構成因子とする神経RNP顆粒はどのような機序で形成されるのか、何を運んでいるのか、運ばれたRNAはどのような転写後制御をうけるのか、や、パラスペックルの構成因子として知られるNonOやPSFがなぜ分化した細胞では細胞質に移行するのか、それはどのような機序で制御されているのか、他の神経細胞ではどうなのか、といった今後さらなる発展が期待できる課題を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はHERMESを構成因子とする神経RNP顆粒がどのような機序で形成され、どのようなRNAを運び、それらがどのような転写後制御をうけるのか、またNonOやPSFの細胞質移行がどのようにして制御されるかについて検討する。具体的にはHERMESやNonOと相互作用するタンパク質を質量分析によって同定し、また他の神経由来培養細胞を用いてHERMES以外の神経RNP顆粒の構成因子の動態を調べることで、RNP顆粒の形成や局在を制御する因子の候補を得る。さらに、HERMESやNonOと相互作用するタンパク質はどういった転写後制御に関わるタンパク質なのか、それらとの結合が報告されているRNAはHERMESを構成因子とする神経RNP顆粒に含まれるのかなどを調べることで、神経節細胞特異的に形成される神経RNP顆粒の構築から転写後制御までの全体像を明らかにする。
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