本年度は、活性型Gli3および抑制型Gli3を上流で制御するHedgehog(Hh)シグナルに関して実験を遂行した。マウス脛骨骨折モデルを使用し、活性型Gli3および抑制型Gli3ノックアウトマウスの実験へとつながる解析を進めてきた。 8週齢のC57BL6/J雄マウスの左側脛骨骨折モデルを使用し、vehicle(精製水)を投与したコントロール群とSmoothened agonist(SAG)投与によるHhシグナル活性化群の骨折治癒過程の評価を行った。骨折後1日目にvehicleまたはSAGを骨折部へ局所投与し、骨折後14日目左側脛骨を採取した。3次元マイクロCTを用いた解析にて、骨密度の高い領域および低い領域ともにSAG投与群で仮骨形成量の増加が認められた。骨量、骨塩量、骨密度を計測し、すべての項目においてSAG投与群で有意な増加が認められた。以上より、SAG局所投与の影響は、高度に石灰化した仮骨および未熟な骨の両領域に及び、外因性にHhシグナルを刺激することは仮骨形成促進に寄与することが示唆された。 さらに詳細な解析のため、軟性仮骨と硬性仮骨の領域に分け組織学的解析を行った。軟性仮骨における免疫染色では、SAG投与群において、PCNA陽性細胞およびSOX9陽性細胞の割合が有意に増加していた。SAG局所投与により、軟骨細胞が増殖し、軟性仮骨の形成が促進されることが示唆された。硬性仮骨における免疫染色では、SAG投与群において、SP7陽性細胞の割合が有意に増加しており、マッソン・トリクローム染色でも新生骨量の増加が認められた。以上、硬性仮骨においてもSAG投与により、仮骨形成が促進されることが示唆された。
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