研究課題
CLRの1つであるMincle(Macrophage inducible C-type lectin)は、マラセチア真菌や結核菌由来脂質成分を認識することが明らかとなっている。また、Mincleは死細胞を認識することから、損傷に伴って生成される内因性脂質成分を認識する可能性も考えられるが、Mincleの内因性脂質リガンドは見つかっていなかった。申請者は、内因性脂質成分中にMincleのリガンドが含まれる事を発見した。加えてMincleは、効率良く獲得免疫を誘導するアジュバントレセプターであることから、『損傷細胞より放出される脂質成分が内因性アジュバントとして機能する』という新たなモデルを着想するに至った。ここから、内因性Mincleリガンドの同定、その生理的機能の解析を行うことを目的とした。一方、脂質分解酵素機能欠失型ミスセンス変異は、内因性脂質の過剰な蓄積を引き起こし脂質代謝異常症の原因となることが知られている。肝脾腫、神経障害等の症状が主に確認されているが、発症に至る分子機構は未だ不明である。申請者は、ミエロイド系細胞上で脂質成分を認識するMincleが、蓄積した脂質成分を認識して過剰な炎症を惹起する原因受容体として機能している可能性を考え、その病理的機能の解析を行うことを目的とした。1、新たな内因性Mincleリガンドを同定した。2、ミエロイド系細胞を内因性Mincleリガンドで刺激すると、Mincle依存的に活性化され、炎症性サイトカインの産生が確認された。今後、この新たに発見されたMincleリガンドのアジュバント活性の検討や、代謝異常症モデルマウスの樹立を通し、さらにMincleの機能解析を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、新たに発見した内因性糖脂質リガンドに対する、ミエロイド細胞活性化におけるMincleの機能解析は、in vitroについては概ね終了した。また、すでに代謝異常症モデルマウス樹立の為の、ターゲティングベクター作製も開始済みである。
生理的機能解析については、新規内因性Mincleリガンドのアジュバント活性をin vitro、in vivoの系において進めて行く予定である。まず野生型に対し、抗体産生、免疫後再刺激の系を用いてアジュバント活性を確立した後、Mincle欠損マウスを用いた検討を行う予定である。病理的機能解析については、脂質代謝異常マウスモデル樹立を進めて行く予定である。このマウスは、出生後24h以内に死亡することが確認済みである為、その病態解析の為、Cre-loxPシステムやTet-offシステムを用いて、時期/組織特異的代謝酵素欠損マウスを樹立する予定である。
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Infection and Immunity
巻: 83 ページ: 184-196
10.1128/IAI.02500-14.