前年度の成果を基に本年度の方策を化学エッチングによる比表面積変化及び欠陥導入に重きを置いた研究を進めることとした。前年度までの研究により結晶化ガラスの光触媒活性が比表面積を大きく関係している可能性を示唆した。よって,本年度では結晶化ガラスの比表面積をBET法を用いて測定した。その結果,エッチング後の比表面積が18 m2/gであり,エッチング前よりも18倍大きい値を有することが判明した。この倍率は触媒活性の上昇率と対応するものであり,結晶化ガラスの光触媒活性が比表面積に大きく影響を受けるものであることが判明した。これに加え,エッチング後の比表面積は粉末材料に匹敵する値であり,粉末材料と同等の比表面積をもつバルク型材料の作製に成功したことが判明した。 欠陥導入に関して,結晶化ガラスに可視光応答性を付与することを目的として行った。種々の方法により欠陥導入を試みた結果,その手法によって導入される欠陥の種類とその導入量に大きな違いがあることが判明した。また,欠陥種によって可視光域での光吸収にも違いが生じることが分かり,手法による選択的な欠陥導入およびそれによる光学特性の制御に成功した。しかしながら,本研究課題で対象としたガラス組成においては可視光応答性が発現せず,導入した欠陥が光触媒反応を阻害している可能性が示唆された。一方で,他の光触媒結晶化ガラスにおいて欠陥導入により可視光応答性を初めて観測することに成功した。この組成における応答性発現機構等に関しては不明ではあるが,今後の研究により実用化可能な光触媒材料の創製に期待がされる。
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