研究実績の概要 |
動脈硬化病変の形成には、マクロファージがその中心的な役割を担っている。2015年度は、セマフォリン3G(Sema3G)のマクロファージ血管内皮細胞への遊走能に与える影響を検証するため、in vitro実験を進めた。 2014年度末より生成を試みていたSema3Gのリコンビナント蛋白が完成したため、これを用いて、Sema3Gの機能を検証した。マウス腹水由来マクロファージであるRaw264.7細胞とヒト単球のcell lineであるTHP-1細胞を用いて、Sema3Gがマクロファージの遊走能、接着能、増殖に与える影響を評価した。またヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて、Sema3Gが単球の走化性因子であるMCP-1の発現制御に与える影響を評価した。 マクロファージ自体には、Sema3Gの発現は見られなかったが、その受容体であるNuropilin1, 2やPlexinA1, B1, B2, D1, VEGFR1, 2, 3が発現している事をRT-PCRにより確認した。続いて、Sema3Gリコンビナントを用いたin vitro実験を行った所、Sema3Gはマクロファージの遊走能には影響を与えないが、Sema3G添加によりTHP-1細胞とHUVEC細胞の接着が阻害される傾向がみられた。さらに、Sema3G添加によりHUVEC細胞における白血球遊走刺激因子であるMCP-1の発現が有意に抑制され、RAW264.7細胞の増殖が抑制される傾向が確認された。以上の結果から、内皮細胞から分泌されるSema3Gはマクロファージのみならず、オートクラインで内皮細胞にも作用を及ぼし、局所におけるマクロファージの細胞増殖抑制効果と、活性化した血管内皮細胞への接着を抑制する効果を持つと考えられた。これらの作用を通じて、Sema3Gは、動脈硬化抑制作用を持つ可能性がある事が示唆された。
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