研究課題/領域番号 |
14J04504
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
髙橋 一平 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 軌道上ロボット / インピーダンス制御 / パラメータチューニング / 柔軟ワイヤ |
研究実績の概要 |
本研究では,現在宇宙開発において大きな問題となっている宇宙ごみ,特に故障衛星のような大型宇宙ごみの捕獲・除去を目指した.この目標達成のために,ここでは閉空間把持手法と呼ばれる捕獲手法を用いた.この手法では,柔軟ワイヤを有する閉空間把持機構と柔軟関節マニピュレータが用いられている.しかし一方で,この捕獲手法には捕獲するために能動的に適用される有効な接触制御は適用されてはいない. そこで本年度では,閉空間把持手法による姿勢制御系が故障した衛星の捕獲手法確立のための第一歩として,並進運動するターゲットの安定した捕獲手法を提案した.まず捕獲手法の特性を知るために,閉空間把持手法が適用されているミッションの一つであるHTV捕獲ミッションのシミュレータを構築し,軌道上捕獲シミュレーションを行った.その結果,柔軟関節の場合に捕獲を行うと,大きな接触力が生じることが分かり,安定した捕獲には最大接触力を小さく保つように制御することが必要であることがわかった. この知見に基づき,閉空間把持機構が搭載された柔軟関節マニピュレータによる接触制御則を構築した.この接触制御では,ターゲットの弾き飛ばしをしないよう接触を維持し,かつターゲットの状態によらず接触力の最大値を一定に保つことを目標とした. この目標実現に対して,本研究ではインピーダンス制御を基本として,インピーダンスパラメータの調整を行なうことで,浮遊ターゲットとマニピュレータ手先間の相対運動を制御し,浮遊ターゲットとマニピュレータ手先間の接触を維持すること,および最大接触力をターゲットの状態によらず一定に保つことを可能とした. 本接触制御は,宇宙ごみの除去手法への適用が見込めるほか,軌道上ミッション時の偶発的な事故が生じた場合の回避手法や,将来的には人工衛星に燃料を補給するために必要な軌道上サービス技術の確立に対しても有効であると期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず本研究の目標は,「柔軟ワイヤに生じる張力に基づいた制御による複雑な運動するターゲットの捕獲手法の提案」であった.それに対し本年度ではまずターゲット側の運動を並進運動に限定して研究を進めた.その際,ターゲットの突き飛ばしの防止とワイヤ接触力の抑制をインピーダンス制御およびそのインピーダンスパラメータの調整により実現させた.その点から,本研究はおおむね十分に進展していると言えるであろう.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,回転しているターゲットを捕獲するために,本年度で提案した捕獲手法の拡張を目指す.その際に重要となってくるのが,タンブリングのような複数軸による回転運動を有する場合である.まずは一軸での回転運動に対し,ターゲットの重心からずれた部分で接触するときの挙動検証をシミュレーションにより行う.その際,難しくなるのが接触後に生じるターゲット側の姿勢変動である.大きく跳ね返してしまうと,並進運動のときよりも軌道上ロボット側に接触する危険性もある.そのため,回転運動を有するターゲットの捕獲の際にも,突き飛ばさずに接触を維持し,姿勢を制御するために接触で生じるモーメントを制御することを行う予定である.
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