結び目不変量であるHOMFLYPT多項式とKauffman多項式の両方にそれらの共通の零番係数多項式として含まれる結び目不変量のΓ多項式とそのケーブル化の研究を行った。 1. 結び目のクラスプ数とΓ多項式の研究 任意の結び目は特異点集合の連結成分が有限個のクラスプ弧からなる特異円板(クラスプ円板)を張る。そのクラスプ円板のクラスプ弧の最小数をその結び目のクラスプ数と呼ぶ。平成26年度は、クラスプ数が高々2の結び目のΓ多項式の特徴付けを行った。クラスプ弧の数が2のクラスプ円板には、2種類の同相類(0型、1型)が存在する。平成27年度は、平成26年度の特徴付けの結果を用いて0型、1型の判定問題を主に研究した。結果として、0型を張るが1型は張らない結び目、0型は張らないが1型を張る結び目、0型と1型両方を張る結び目をそれぞれ無限個構成した。現在は、「すべての結び目のΓ多項式は、クラスプ数が高々2の結び目で特徴付けできるか?」「0型を張る結び目は、素な結び目か?」という問題の研究を行っている。 2. Γ多項式のケーブル化の研究 Γ多項式のケーブル化を計算することは容易ではない。結び目のクラスプ数とΓ多項式の研究で、結び目のΓ多項式は、ある条件付きのクラスプ-パス変形で不変であることを発見した。現在は、この性質を使ってΓ多項式のケーブル化の計算と体積予想のアナロジーの研究を行っている。さらに、「Γ多項式のケーブル化でミュータント結び目の組を区別できるか?」「2つの結び目のΓ多項式のケーブル化がすべて一致するならば、それらのHOMFLYPT多項式とKauffman多項式もそれぞれ一致するか?」という問題の研究を行っている。
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