研究課題/領域番号 |
14J04556
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井元 祐太 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 超分子ナノマシン / Peroxisomal division / Dynamin / Cyanidioschyzon merolae |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き1) 装置の形成機構、2) 装置の収縮機構の2点について解析を行ってきた。 1) 装置の形成機構 DB ringの形成機構を明らかにするため、DB ringの再構築系(semi-in vivo asssay for DB ring formation)を開発した。その結果、DB ringが以下の順序で形成されることを明らかにした。1) POD machinery上の一点でDB ring organizing center (DOC)が形成される、2) DB ringはDOCを起点として、Dnm1分子を重合することにより一方向に伸長される。伸長速度はGTP濃度依存的/加水分解非依存的であり、この現象は最速で1分以内に行われた。興味深いことに、直径400 nm以下のリングではDOCは2箇所形成され、DB ringの伸長はそれぞれから同一方向に行われた。この結果は、包膜のPinching-offでは初期の収縮段階に比べ、より速いDB ringの形成、Dnm1のターンオーバーが必要であることを示唆している(論文投稿中)
2) 装置の収縮機構 昨年度行ったPOD ring収縮因子候補遺伝子の探索により候補遺伝子MIF1を得ている。MIF1は核酸代謝ドメインを持つ15kDaのタンパク質であり、その酵素活性を調べるためESI-MS/MS解析を行った。大腸菌から精製したMIF1タンパク質はATPとGDPの添加によりGTPを、ADPとGTPの添加によりGDPを生成することが分かった。MIF1の抗体を作製し、細胞内局在解析を行った結果、MIF1は間期には細胞質に局在し、M期ではミトコンドリア分裂面とペルオキシソーム分裂面に局在することが分かった。この局在は分裂装置に含まれていたDnm1と一致していることから、MIF1は分裂装置に収縮力のエネルギー源であるGTPを供給する機能があるのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度の研究計画は、1)POD ringの形成機構解明、2) POD ring とMD ring収縮因子候補遺伝子の探索を実施することであった。 1) に関しては、Semi-in vivoでPOD ringの主要構造であるDynamin-based (DB) ringを再構築する系を開発し、DB ringの形成起点を同定することに成功した。さらにDB ringが微小管のように形成起点から一定の方向にDnm1分子を重合することで伸長することを明らかにした。この機構はGTP濃度に依存していたが、GTP加水分解非依存的であった(論文投稿中)。 2) に関しては、昨年度すでに新規分裂タンパク質を同定することに成功しており、本年度ではその機能解析を進めた。新規分裂タンパク質の酵素活性、抗体をもちいた局在解析をおこない、その結果POD ringとMD ringの収縮活性を促進する機能を持つことを明らかにすることが出来た。 よって本年度の特別研究員の研究課題は期待以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
MIF1がATP、GDP依存的にGTPを生成する酵素であることは明らかになったが、細胞内における実際の機能は不明な点が多い。そこで、MIF1の酵素活性部位をアミノ酸置換によって非活性化したドミナントネガティブ変異体発現によって、GTP生成能がPOD machineryの形成・収縮に及ぼす影響を検証する。また、semi-in vivo assay for DB ring formationによってMIF1がDB ringの形成に及ぼす影響を、DB ringの伸長能、伸長速度の面など多角的な検討を加える。
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