本研究に置いて、我々はペルオキシソーム分裂装置(POD machinery)の主要構造であるDB ringのsemi-in vivo再構築系を開発し、ringの形成起点Dynamin-based ring organizing center (DOC)を同定することに成功した。mCherry-tagged Dnm1の細胞内局在解析によって、新規合成されたGTP結合型のDnm1が細胞質からDB ring上に局在化することが分かった。GTP結合型Dnm1はDB ring上に一ヵ所存在するDOCを起点としてGTP濃度依存的に一方向へ伸長した。従ってDB ringは微小管同様に方向性を持つ構造であることが予測される。興味深いことにDOCは直径500nm未満、すなわち膜分断の最終段階においてはDB ring上に二箇所形成されることが分かった。各DOCからはそれぞれ独立したDB ringが形成されていることから、包膜の分断においてはより強い収縮力を発揮するため二重構造のDB ringが必要である可能性が考えられる。この仮説は、in vivoにおいて高電子密度のリング幅が増加すること、in vitroにおいてDnm1-ringの脂質膜へ接触面の増加がより顕著な脂質膜の変形を引き起こすという過去の研究結果と一致している。以上の結果をまとめ、Journal of Cell science誌に発表し当該号のHighlight articleに選ばれた。また、ミトコンドリア分裂装置上においてもDOC様構造の存在が強く示唆されているため(投稿準備中)、本研究で同定されたDOCは普遍性を持つ構造であると考えられる。 この成果に加え、プロテオーム解析を基盤とした手法によってPOD machineryの構成タンパク質同定にも成功しており、装置の形成機構、分子構造の解明に大きな進展を得られている。
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