研究課題/領域番号 |
14J04581
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 周作 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 寄付行動 / 行動経済学 / 社会選好 / 利他性 / 互恵性 / 同調性 / 平等主義 / Webデータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、個人の寄付の意思決定に社会選好等の行動経済学的要因が及ぼす影響を明らかにすることである。本研究の特徴は、従来検証の手段として使われてきた質問紙による調査方法や学生被験者を集めた実験室実験だけでなく、Webサイト等で蓄積された大規模データや現実の寄付者を被験者とするフィールド実験の活用を積極検討するところにある。上記の手法の組み合わせにより、先行研究では分析対象とすることが困難だった仮説を検証したり、実際の寄付行動への効果の程度を評価できるようになる。 平成26年度の研究活動では、二つの研究成果を得た。一つは当初計画書に沿った成果であるが、もう一つは当初計画書から発展実施したことによる、期待以上の成果である。 一つ目では、寄付の意思決定に他人との比較が強く影響を及ぼすことを明らかにした。特に寄付金額の決定に際して、他の寄付者が複数人いる状況で多数の人が同一金額で寄付している場合に影響を受けやすいこと、影響を受けた結果として、その同一の寄付金額と同じ金額で寄付しやすくなることが分かった。分析には日本最大級のインターネット寄付サイトのデータを用いた。寄付サイトに備えられた、過去の複数寄付者の個別寄付金額が参照できるWebデザインを効果的に活用した。得られた結果を国内外の学会で報告し高い評価を得た。特に、行動経済学会では行動経済学会奨励賞を受賞した。 二つ目では、個人の選好の違いが寄付の意思決定に影響を及ぼすという現象は広く一般に観察されるのかを分析した。分析には「くらしの好みと満足度についてのアンケート」調査(大阪大学)の個票を用いた。また、日本の特徴を相対的に評価するため、米国調査の個票も分析に用いた。主要結果として、日本では、他者との比較・平等性向、互恵性が寄付の意思決定で重要なのに対して、米国では、利他性、互恵性が重要な決定要因であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度の研究は期待以上の進展があったと言える。 一つ目の研究成果は、当初計画書に沿うことで得られた成果であるが、日本経済学会秋季大会、行動経済学会、応用計量経済学コンファレンス、シカゴ大学Science of Philanthropy Initiative主催のコンファレンスにおいて報告し高い評価を得た。特に、行動経済学会では行動経済学会奨励賞を受賞した。また、本研究の成果を論文として纏めて、シカゴ大学Science of Philanthropy InitiativeのWorking Paper Seriesとして公開した。 二つ目の研究成果は、当初計画書から発展実施した研究により得られた成果であり、期待以上のものと言える。一つ目の研究や、実験的手法のように統制された環境で観察される、個人選好の違いの影響が一国全体でどの程度平均的に観察されるかを検証することは、政策的観点からも重要であると言える。以上の点を踏まえれば、一つ目の研究と二つ目の研究は補完的な関係にあり、両者を並行して実施することは本研究課題全体の学術的意義および実務的意義を高めることに繋がる。
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今後の研究の推進方策 |
一つ目の研究は、平成27年4月に経済学分野の学術雑誌に投稿した。二つ目の研究は、平成27年の日本経済学会秋季大会で報告できる見込みである。 平成27年度の研究活動は、平成26年度の二つの研究を更に深める形で実施する。一つは、一つ目の研究で検証した他者情報を提供することの効果が、別種類の情報を提供をすることの効果と比較してどの程度異なるのかというように、複数種誘因の効果を実験的手法により比較検証するものである。本研究実施の際には、当初研究計画書に記してあるようにWebサイト等のツールの優位性を効果的に活用する。 もう一つは、他者の影響を受けやすい、ということを含めた個人選好の違いが、寄付行動をどの程度説明するかを、寄付先分野、寄付対象の親しさなどの違いを考慮して検証するというものである。分析には、質問紙調査による既存データと共に実験的手法を採用する。
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