広く社会的に発達障害が注目されるにつれ、今まで見過ごされてきた大人から診断を求めるケースも増えている。しかし、自閉症スペクトラム障害の診断においては健常とされる状態と区別しにくいレベルの人が存在し、見過ごされやすい現状がある。 そこで今後、神経生物学的なマーカーが診断に活用されていくことが必要と考えられる。自閉症スペクトラム障害の神経生物学なマーカーを明らかにすることで、1)従来の診断と組み合わせにより正診率を上げることができ、2)その個人の障害の程度から、どのレベルの対処や支援が必要なのかを補助できるのではないかと考えられる。本研究では、高機能自閉症スペクトラム障害の共感の障害について神経基盤の解明と育成を目的とした研究をすすめている。さらに、ニューロフィードバックの研究につなげ、新しい個別的な支援方法の開発の可能性を開くと考えられる。 共感の主要な障害としては、視点取得や感情への気づきといった側面があげられ、この2点についての論文の投稿を準備をしている。視点取得の研究では、より基本的な能力である視空間的視点取得が他者の心的な視点の取得と関連していることが明らかとなった。また、感情への気づきの研究では、自閉傾向と表情認知課題との関連を検討し、社会的スキルもしくは 細部への注意と表情に対する敏感性との間の関係が示唆された。共感の構成要素を明らかにしていくことにより、今後支援の枠組みが広がることが期待される。
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