研究課題/領域番号 |
14J04677
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 俊輝 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 量子エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本研究では物質系を用いた量子メモリと量子波長変換を用い、光ファイバを経由した長距離量子通信を目指す。このため、Rb原子集団を用いた量子メモリから発生する光の量子状態を保持した通信波長帯への波長変換実験と、量子波長変換の性能評価を行う。昨年度に引き続き、今年度も当初の計画以上に進展し、以下の成果を得た。
1.昨年度構築したRb原子集団の磁気光学トラップを用いて、量子メモリを実装した。この量子メモリの書き込み読み出し過程で発生するアンチストークス光とストークス光の非古典性を自己相関関数から直接確認した。続いてアンチストークス光を通信波長帯へ波長変換し、同様に非古典的な自己相関関数を直接観測した。これにより、通信波長光を用いて非古典的な状態を量子メモリに用意できることが確認され、量子中継器への応用可能性を示した。この成果は本年度の国内学会で口頭発表を行った。また、現在この実験に関する論文を投稿準備中である。
2.昨年度実験を行った、量子波長変換器を波長自由度のビームスプリッターとみなし、波長780 nmと1522 nmの二光子を干渉させた二光子干渉実験について、理論モデルを構築して実験結果の解析を行った。その結果、世界初となる異なる光波長の二光子の干渉が十分に非古典的な干渉を示していることを明らかにし、空間自由度を波長自由度に置き換えた新しい光波長多重化量子演算の可能性を示した。この成果はNature Photonics誌に来年度(平成28年度)4月19日付けで出版されることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、交付申請書記載の「Rb原子集団からの単一光子の波長変換」の実証実験に成功し、申請時の目標を達成した。更に、波長自由度のビームスプリッターとしての量子波長変換器を用いた二光子干渉実験の成果がNature Photonics誌に来年度(平成28年度)4月19日付けで出版されることになった。これは、当初予定していた以上の成果を得たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、Rb原子集団からの非古典光の波長変換の実証実験と波長自由度のビームスプリッターとしての量子波長変換器を用いた二光子干渉実験を行った。この実験結果を元にRb原子集団からの非古典光の生成効率と波長変換器の変換効率が確認できたため、今後はこれらの値を基に、より量子中継プロトコルに近い状況での量子波長変換器の実証実験を目指す。また、波長自由度のビームスプリッターとしての性質も得られたため、この結果を量子計算へ応用していく実験も検討する。
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