研究課題
本研究では物質系を用いた量子メモリと量子波長変換を用い、光ファイバを経由した長距離量子通信を目指す。このため、Rb原子集団を用いた量子メモリから発生する光の量子状態を保持した通信波長帯への波長変換実験と、量子波長変換の性能評価を行う。昨年度に引き続き、今年度も当初の計画以上に進展し、以下の成果を得た。1.昨年度実現したRb原子集団を用いた非古典光を利用し、Rb原子集団とエンタングルした光子の生成、通信波長帯への波長変換を行った。まず、Rb原子集団とエンタングルした光子の生成では、量子メモリの書き込み読み出し過程で発生する非古典的な相関を持ったアンチストークス光とストークス光をそれぞれ二つの光学経路で用意し、波長板と偏光ビームスプリッターを用いて経路を重ねることで偏光エンタングル状態を実現した。これに加えて、サニャック型干渉計の内部に量子波長変換器を配置することで偏光エンタングル状態を保持する量子波長変換を実現した。これらを組み合わせることで、最終的にRb原子集団とエンタングルした通信波長光子を実現し、光ファイバを経由した長距離量子通信の実現可能性が示された。2.量子波長変換器を波長自由度のビームスプリッターとみなして光量子計算への応用の可能性を探るため、光量子回路として重要な役割を果たすマッハツェンダー干渉計の波長自由度での実証実験を行った。波長1580 nmのレーザー光に対して二段の波長変換を行うマッハツェンダー干渉計を用いることで明瞭度0.99の干渉が得られた。これによってより複雑な波長自由度での光量子回路の実現可能性が示された。3.昨年度までの成果について、Rb原子集団を用いた非古典光の波長変換実験がOptica誌から出版された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Optica
巻: 3 ページ: 1279-1284
10.1364/OPTICA.3.001279