研究課題/領域番号 |
14J04730
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山根 惠太郎 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 腎血管内皮細胞 / SP細胞 |
研究実績の概要 |
申請者は、本年度において、昨年度に引き続き腎糸球体血管内皮幹細胞分取の為、内皮幹細胞自身の性質を確認ならびに内皮幹細胞の臨床応用に向けて、人工的な細胞の増幅は必須であると考え、比較的分取の容易な肝臓由来の血管内皮幹細胞の試験管内増幅に関して検討を行った。効率的な試験管内増幅のために、細胞培養皿、培養液、コーティングによる足場形成、血管を足場とする増幅、機械的刺激の有無などについての検討を重ねた。 ①細胞培養皿に関して、市販されている様々なものを使用するとともに、細胞密度も重要なのではないかと考え様々な細胞数で培養を行った。また、細胞塊を作らせて3次元培養のような状態での培養も行った。 ②培地にはこれまで血管内皮細胞の培養に使用されてきたものや、造血幹細胞など増幅が困難とされてきた組織幹細胞培養に適しているとされているものを使用した。 ③足場依存的に増殖シグナルが入ると仮定し内皮幹細胞におけるインテグリンの発現レベルの検討も行った。ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンなどをコートし、培養を行った。ラミニン研究に関しては、大阪大学蛋白質研究所 関口清俊教授との共同研究で実施した。 ④足場に関して、③で示したように細胞外基質を利用したものに加えて、ダチョウの頸動脈血管を脱細胞化し、それを足場としての幹細胞増幅の検討を行った。 ①-④のように様々なパターンでの培養や、これらを組み合わせて増幅に挑戦したが、現在までに短期間での幹細胞性を維持したままでの培養は可能だが、長期間維持もしくは増幅させることは出来ていない。次年度以降、さらに生体内を模倣した環境や、液性因子等の添加によって、中長期的な培養の検討を行う予定である。また、肝臓の血管内皮幹細胞における性質が解明されれば、腎糸球体血管内皮幹細胞の分取に利用可能な細胞表面マーカー探索などに応用できる可能性があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の検討より、腎臓血管内皮幹細胞の濃縮が困難であることから、本年度では別の細胞表面マーカーでの分取の検討に加え、主に肝臓血管内皮幹細胞を利用した、試験管内増幅の検討を行った。様々な条件を検討し、血清濃度、液性培地などを変えることで1週間程度の維持は可能であった。より詳細な条件検討が必要ではあるが概ね研究は進捗していると思われる。 これまでのところ、腎糸球体血管内皮の利用ではないものの、血管内皮幹細胞の試験管内増幅は年次計画に沿っており、ある程度の進展はあったと考えられる。この計画のさらなる発展によって、血管内皮幹細胞の臨床応用あるいは腎臓などの他臓器由来の血管内皮幹細胞についての詳細な生物学的特性についても解明する手がかりとなり得ると考えている。 以上から、これまでのところ、年次計画よりやや遅れているが、今後上記の計画に沿っていくことで遅れを取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度における研究では、様々な培養条件にて、肝臓血管内皮由来の幹細胞分画の長期培養の検討を行ってきたが、今後、さらに液生因子を使用することや、他の細胞分画との共培養系等を試みていく予定としている。また、細胞外基質をコートした培養皿上での培養についても、新たな条件を加えて行っていく予定としている。今後、臨床において幹細胞治療を進めていく上で、一定数以上の細胞数が必要となる為、本研究において足場を用いた幹細胞の長期培養系を確立したいと考えている また、これまでの研究結果から、腎臓由来血管内皮細胞集団の割合が少ない上、ヘキスト染色液の排出能力が著しく高いため、ヘキスト法での分取が困難であると考えられる。その為、肝臓血管内皮幹細胞におけるマイクロアレイ結果(未発表)をもとに腎臓血管内皮幹細胞の分取マーカーになるような細胞表面抗原の探索も同時に遂行していく予定としている。
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