申請者は、本年度において、昨年度に引き続き腎糸球体血管内皮幹細胞分取の為、内皮幹細胞自身の性質を確認ならびに内皮幹細胞の臨床応用に向けて、人工的な細胞の増幅は必須であると考え、比較的分取の容易な肝臓由来の血管内皮幹細胞の試験管内増幅に関して検討を行った。効率的な試験管内増幅のために、細胞培養皿、培養液、コーティングによる足場形成、血管を足場とする増幅、機械的刺激の有無などについての検討を重ねた。 ①昨年度に引き続き、足場依存的に増殖シグナルが入ると仮定し、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンなどをコートし、培養を行った。特にラミニンの複合的な組み合わせによって増殖能が増加するか検討を行った。ラミニン研究に関しては、大阪大学蛋白質研究所 関口清俊教授との共同研究で実施した。 ②足場に関して、①で示したように細胞外基質を利用したものに加えて、ダチョウの頸動脈血管を脱細胞化し、それを足場としての幹細胞増幅の検討を行った。この足場に対して様々な細胞外マトリクスをコートすることによって増殖能が変化するか検討を行った。 上記のように様々な足場のパターンでの培養に挑戦したが、現在までに短期間での幹細胞性を維持したままでの培養は可能だが、長期間維持もしくは増幅させることは出来ていない。 さらに生体内を模倣した環境や、液性因子等の添加によって、中長期的な培養の検討を行う予定である。また、肝臓の血管内皮幹細胞における性質が解明されれば、腎糸球体血管内皮幹細胞の分取に利用可能な細胞表面マーカー探索などに応用できる可能性があると考えている。
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