研究実績の概要 |
本研究では、フタホシコオロギが昼行性から夜行性に切り替わるスイッチのメカニズム、概日リズムの光周反応の維持、タンボコオロギの光周性について二種類のコオロギを用いてエピジェネティックな遺伝子発現制御を中心に解析を行った。 研究計画に従い、フタホシコオロギにおいて、野生型の終齢幼虫または成虫初期にエピジェネティック因子E(z)のRNAiを行い、遺伝子発現の抑制および行動リズムの発現を検証した。野生型では約4日で昼行性から夜行性への位相シフトが完了するが、E(z)のRNAi個体では約8日かかり、2倍ほど長期化することを明らかにした。また成虫初期へのRNAi実験で与える光周期条件(明暗: 12h:12h (短日), 20h:4h (長日))を変え恒暗条件下で自由継続リズム解析すると、短日条件下では野生型とRNAi個体ではリズム変調は認められなかったが、長日条件下において、野生型は短い暗期に同調し活動期が集中するのに対し、E(z)のRNAi個体は暗期の長さには同調せず、まるで短日条件下のような長期の活動期を継続した。これは位相シフトや光周期変動による体内時計のリセットを制御している概日時計機構がエピジェネティックに制御されているためであると考えられる。現在、これらの条件下における時計遺伝子の発現解析を行っている段階である。 タンボコオロギにおいては、エピジェネティック因子(E(z), Utx, nejire,Rpd3, DNMT3, TET)の遺伝子断片をクローニングした。成虫の卵巣で二本鎖RNA処理を行い、遺伝子発現の変化や活動リズムの光周期依存的な変化を観察する計画であったが、RNAiを行ったE(z), nejire, Rpd3は発生段階で致死であったため、光周反応が決定する2齢初期(小型で弱く、RNAiが困難)でノックダウンする方法を検討中である。
|