研究課題
本研究課題ではフタホシコオロギを用いて脚再生、及び概日時計機構におけるエピジェネティックな遺伝子発現制御を解析した。エピジェネティック因子E(z)と Utxは再生中の脚のヒストンH3の27番目のリジン残基(H3K27)のメチル化/脱メチル化に寄与し、RNAi個体の再生脚は形態異常が観察された。正常個体を脛節で切断すると、脛節、脛節棘、3つの附節、附節棘、爪を再生する。E(z)(RNAi)個体の再生脚の最もシビアな表現型は過剰な脛節及び脛節棘が挿入された。Utx(RNAi)個体の再生脚は附節及び附節棘の形成異常が観察された。形態異常の原因を解析するため、脚パターン形成遺伝子の発現解析を行った結果、E(z)はdachshundの発現領域を制限することで過剰な脚節形成を抑制し、UtxはEgfrの発現を活性化することで附節形成異常を抑制し、正常な再生を誘導していることが示唆された。エピジェネティクスと概日時計機構の関与についても解析した。夜行性の成虫は光周期を明期12時間:暗期12時間(LD12:12)からLD20:4に移すと短い暗期に活動を集中させ、恒暗条件下においても短い主観的夜を継続する。E(z)(RNAi)個体では大部分の個体で短い暗期での活動の集中が阻害された。歩行活動への影響は時計遺伝子の発現変調を介しているのではないかと推定し、フタホシコオロギにおいて時計の中枢とされる視葉で解析を行った。LD12:12及びLD20:4においてE(z)が発現しており、RNAiによって発現レベル、ヒストンH3K27のトリメチル化レベルが低下することを明らかにした。正常個体とE(z)(RNAi)個体の視葉における時計遺伝子の発現特性を解析すると、LD12:12ではほとんど差はないが、LD20:4では発現特性が大きく異なることが明らかとなった。これらの結果より、LD12:12からLD20:4への光周期変調の際、時計遺伝子がE(z)によって発現調節を受け新しい光周期に適応していることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Zoological letters
巻: 2 ページ: 5
10.1186/s40851-016-0042-7
Development
巻: 142 ページ: 2916-2927
10.1242/dev.122598
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id333.html
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id5134.html