研究実績の概要 |
【目的】我々の過去の研究で1-ブロモプロパン(1-BP)暴露がヒトで抑うつ、不安症状、記憶・認知障害など、様々な中枢神経症状を引き起こすこと、ラットではノルアドレナリン神経線維、ノルアドレナリン量の減少、ニューロン新生の抑制を引き起こすことを明らかにしている。本研究では、同じ環境中のソフトな親電子性物質であるアクリルアミド暴露が1-BPと同様な中枢神経毒性を起こすことを確認し、環境中親電子性物質による中枢神経影響・認知機能障害の作用機序の解明、バイオマーカー探索を行う。
【方法】10週齢雄Wistar STラット48匹を12匹ずつの4群に分け, 0,0.2、2、20mg/kg bwのアクリルアミドを 1日1回、週7日、5週間、gavageによって経口投与した。暴露終了後、各群12匹のうち6匹にBrdUを三回腹腔注射し、最後のBrdU注射後に左心室より4%パラフォルムアルデヒド緩衝液にて灌流固定、脳を剖出し、4%パラホルマリン緩衝液で後固定した。残り6匹を断頭・採血したあと、素早く脳を剖出し、各部位に分けして凍結保存した。灌流した脳の凍結切片を作成し、抗BrdU抗体を用いて免疫染色し、海馬歯状回のニューロン新生に対する影響を確認した。ドーパミンβハイドロキシラーゼ(DBH)免疫染色で1-BP暴露によるノルアドレナリン繊維の変化を確認した。前頭皮質、線条体、海馬ホモジェネート中におけるモノアミン量をHPLCを用いて測定した。
【結果・考察】アクリルアミド曝露後、前頭皮質、海馬、線条体でのノルアドレナリン量は減少したが、セロトニン量は変化しなかった。前頭皮質ではノルアドレナリン神経線維密度が減少した。さらに海馬歯状回におけるニューロン新生が抑制された。アクリクアミドの特異的なノルアドレナリン神経への影響は1-BPの結果と一致している。環境中親電子性物質の中枢神経への影響には共通の作用機序が働いている可能性がある。
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