研究課題/領域番号 |
14J04789
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
窪内 将隆 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 熱電発電 / マグネシウムシリサイド / 格子間サイト / 単結晶X線回折 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,マグネシウムシリサイドの格子間サイトのMg量(以下Mgi)を制御するべくアニールや電気化学法を試みた.またコンポジットを作製することで熱電性能向上を試みた. 昨年度まではアニールの条件が最適化されていなかったため,今年度は条件を変化させてアニールを行った.結果として,650℃以上でアニールを行うとMgが脱離することが明らかとなった.またMgは表面から内部にかけて抜けていき,外側から残ったSiが生成することがわかった.しかし格子間サイトのMgだけでなく,正規サイトのMgも脱離していた.以上からアニールでは正規サイトのMgも同時に抜けるため,Mgi量のみを制御することが困難であることがわかった.電気化学法に関しては,定電圧法では表面のMgしか脱離しないため定電流法を試みた.その結果,定電流法においても表面のMgのみが脱離していることが明らかとなった.以上からマグネシウムシリサイドに関して,計算のみならず実験的にもMgiが安定であることがわかった. また昨年度の結果から,マグネシウムシリサイドの熱電性能はMgi量よりも粒界のMg相量が支配的であることが明らかとなっている.そこで今年度は粒界中のMg相量を制御することで熱電性能の向上を試みた.従来の作製方法では試料中にMg相が残らないため,作製方法を変更することで試料中にMgが残存したMg2Si/Mgコンポジット試料の作製に成功した.加えてMg2Si/Siコンポジットの作製も試みた.結果としてSi量の増加に伴いp型性能が向上することが明らかになった.p型試料の作製が困難なマグネシウムシリサイドにおいて,コンポジットによってp型試料が得られた報告はなく,今後ドーピングや置換を行うことでさらなるp型性能の向上を図る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子間サイトの制御を試みて,アニールおよび電気化学法の最適条件を決定した.これらの方法で試料中からMgの脱離に成功したが,正規サイトのMgも同時に脱離することがわかった.また,コンポジット試料の作製により,マグネシウムシリサイドで作製が困難なp型試料を得た.これからはドーピングや置換を行うことで熱電性能の向上を図る.以上から,おおむね順調に進展していると結論付ける.
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今後の研究の推進方策 |
マグネシウムシリサイドにおけるMgi量測定の成功に基づいて,Mg2(Si,Sn)系のMgi量も明らかにする.Mg2(Si,Sn)系はマグネシウムシリサイドと同型の結晶構造をとることから全率固溶する.Snの割合の増加に伴い伝導型がn型からp型に変わることから,試料中のMgi量が変化している可能性がある.またコンポジット試料の熱電性能向上を図り,ドーピングおよび置換を行う.p型試料の向上にはMgサイトを1価のAgやCuで置換,またはSiサイトをBで置換する.また熱伝導率の低減を図り,Mg2(Si,Sn)三元系の作製も行う.
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