研究課題/領域番号 |
14J04794
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 克明 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 有機エレクトロルミネッセンス / 固体発光 / 熱活性遅延蛍光 |
研究実績の概要 |
本研究は、三重項励起子の高効率利用が可能な種々の新規コンセプトに基づく発光性分子を設計・合成し、高い特性を示す有機有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスを開発することを通じて、社会への学術・産業的貢献を目指すものである。 本年度は、新規材料の合成と基礎的な発光特性評価を中心に行い、一部化合物については、有機ELデバイスの作製とその特性評価を進めた。 分子内配位結合を有する四配位ホウ素化合物について蛍光量子収率を測定したところ、酸素除去トルエン中において、69%という値が得られた。また、蛍光寿命測定から熱活性型遅延蛍光が観察された。 また、固体発光材料に関しては、三配位ホウ素化合物について合成を進めた。固体状態においても、60%程度の比較的高い蛍光量子収率と熱活性遅延蛍光を示す化合物が得られた。得られた化合物を用いて有機ELデバイスを作製したところ、22.8%と極めて高い外部量子効率を示した。 逆転一重項-三重項材料に関しては、デバイス作製用途に適する溶解性が高くかつ96%もの高い蛍光量子収率を示す材料の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、遅延蛍光材料、逆転一重項-三重項(iST)材料について、各種材料の合成を主に進めた。四配位ホウ素材料に関しては、当初の計画では、材料の合成と、溶液における基礎物性評価を本年度に行う予定であったが、実際には有機EL素子の作製と特性評価にまで研究が進み、今後研究のさらなる進展が期待される。固体発光材料に関しては、三配位ホウ素材料に関して大きな進展があった。当初予定していた化合物とはやや異なる構造の化合物群ではあるものの、それらの三配位ホウ素化合物を用いた有機EL素子の特性はこれまでに報告されたホウ素発光材料の中では最も高いものであり、高インパクトな論文として発表可能であると期待される。iST材料については、溶解性の高い材料が合成できたため、今後、溶液プロセスでの素子作製を進めていく予定である。 全体として、概ね期待通りに研究が進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた四配位ホウ素化合物、逆転一重項三重項化合物については、有機ELデバイスを作製し、それらの素子特性を評価していく。素子の特性向上のために、ホール輸送性材料、ホスト材料、電子輸送性材料について、種々の条件を検討し、高い特性を示す素子の開発を進めていく。 高い有機EL特性を示した三配位ホウ素化合物に関しては今後、単結晶X線構造解析、ESR測定法等を用いて、新規材料の発光特性、発光メカニズムについて、詳細な検討を行う予定である。
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