分子内B-N配位結合を持つ四配位ホウ素骨格を利用した、TADF骨格を開発し、その分子構造と蛍光特性を調べた。最大外部量子効率は13.1%と高い値を示した。このニート膜における高い外部量子効率は、その高い蛍光量子収率に対応しており、本研究で開発した四配位ホウ素材料が濃度消光をほとんど示さない材料であることが明らかとなった。 昨年度までの研究から、有機非晶膜中の分子配向が有機半導体デバイスの特性を大きく左右することが明らかとなってきた。そこでの本年度は固体NMRを用いた有機非晶膜の分子配向解析に取り組んだ。これまで分子配向測定法として主に用いられてきた、角度依存蛍光測定や多入射角分光エリプソメトリー法は、膜内の分子配向をその平均値であるオーダーパラメータとして求めることが可能である。これら手法と比較すると、固体NMR法は、オーダーパラメータのみでなく、その「角度分布」を含めた評価が可能な有力な手法である。 本研究ではNMRスペクトルの感度向上法として近年注目を集めている動的核偏極(DNP)-固体NMR法を用いて有機半導体材料POPy2の配向解析を行った。その結果、DNP固体NMR測定を用いることにより、通常のNMR測定ではノイズレベルのシグナルしか得られなかったのに対し、マイクロ波を照射することにより、スペクトルの大きな感度向上が認められた。得られたスペクトルについて、ルジャンドル多項式を用いたフィッティングを行い、POPy2の配向解析を行った。その結果有機非晶膜中において、POPy2のP=O軸が基板上に垂直に配向する傾向があるのに対し、ドロップキャスト膜はP=O軸がランダムに分布していることが明らかとなった。
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