研究課題/領域番号 |
14J04841
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 綾乃 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 古代エジプト / 古王国時代 / 石造建造物 / ピラミッド / 造営工程 / 組織 / 階層 / 建設労働者 |
研究実績の概要 |
本研究は、古代エジプト古王国時代の石造建造物(ピラミッドなど)の造営に携わった労働者組織を復元することを目的としている。古代エジプト人は石材に建設作業時の指示やメモ書きを多数残している。これらの文字・記号の判読・分析から、古代史上最大規模の建築事業における管理・統制の実態解明を目指す。 本年度は、当該期の資料を包括的に集成したデータベースを基盤に、まず2回の口頭発表をもって労働者組織編成の時間的な変化について成果発表を行った。既往研究では大・中・小の異なる規模の集団がピラミッド型の階層を構成していることが判明していたが、本研究ではそれらがピラミッドの規模・工法・プランの発展を契機に段階的に発展したものであることを明らかにした。 一方で、古王国時代の後半に大々的な組織の改編が成されたことが示唆された。その組織改編後の様相を具体的に把握するため、古王国時代後半の2遺跡について各々資料の分析・考察を進めた。主な分析方法は、判読、書体分析、分布分析の3手法である。書体分析からは、建設作業時に用いられる文字・記号群の特性、顔料選択に関する特徴が明らかとなった。さらに、文字群ごとに分布域が分かれるという分布分析の結果を受けて、それらの機能を石材の運び先を示すための指示記号の一種であると解釈した。 同じく古王国時代後半の遺跡資料では、比較資料に古王国時代の高官称号を用いて、労働者の管理を行った人物の階層化を試みている。 在外研究として、当該期の出土遺物を所蔵する欧州・エジプトの博物館・遺跡を訪問し、資料・文献の収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げていたエジプトでの現地調査は国内情勢の悪化により縮小せざるを得なかったが、代わりに欧州での資料収集を進めることが出来た。同じく現地調査の縮小により石造建造物に用いられる石材の加工工程やそれぞれの組織に言及できるまでにも現状時間を要するが、代替案として、建設作業時にしるされる文字・記号以外の史資料にも視野を広げ研究を継続している。 また国内学会のみならず、来年度の国際学会での発表もすでに確定済みである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究ではマクロの視点から労働者組織編成の全体的な把握が中心であり、その点は十分に進展した。今後はミクロの視点から、各遺跡の労働者組織の特性をより具体性を持って明らかにすることを目標としたい。本年度実施したケーススタディと同様の手順・方策をもって対象数を増やしていく。それぞれのケーススタディについては、各論でまとめ論文として投稿したい。最終的にマクロ・ミクロ双方の視点から複合的に古代エジプトの建設労働者の組織編成について考察をまとめる。 また本年度はわずかしか実施できなかった現地調査を、次年度で実施したい。そのため現地担当者や資料調査経験のある研究者に調査に先立って研究協力を求めていく。 したがって次年度の研究計画は、まず2015年6月22~26日に国際会議Abusir & Saqqara 2015(チェコ共和国プラハ・カレル大学)にて今年度の成果を含めた口頭発表を行うため、4月~6月はその準備に集中する。本発表の内容は、後に国際会議録として英語論文での公表を控えている。7月以降は昨年度からの継続で古王国時代後半のケーススタディをまとめ上げ、早稲田大学紀要への投稿を準備する。 さらに秋以降、エジプトでの現地調査を1ヶ月程度の期間で予定し、帰国後は今年度成果と併せた包括的な結論を導くため分析・考察を繰り返し進めていく。
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