研究実績の概要 |
タウ蛋白は、微小管結合領域の選択的スプライシングにより4リピート(4R)型、または3リピート(3R)型アイソフォームを呈する。アルツハイマー病(AD)では3R/4R混合型タウの沈着が認められる。近年、AD脳の海馬において、NFTステージ分類の進行に従いタウは4R型から3R型へとシフトしていくことが示された。本研究においては、神経病理学的にADと診断された、異なるBraak NFTステージの剖検例23例の脳幹を対象とし、脳幹でのタウ・アイソフォームの分布を検証するべく、中脳および橋のホルマリン固定パラフィン包埋切片を3R型タウ、4R型タウのアイソフォーム特異的な抗体であるRD3, 4RTau抗体で二重免疫標識し、病理学的検討を行った。XYステージおよびZ軸を自動的に動かすことによりシームレスに画像をつなぎ合わせる3D tiling法を用いて各切片全体像の撮像を行い、更に標本全体に焦点の合った拡張焦点画像を作成することによって、標本上の全てのRD3および4RTau陽性構造の総数をカウントする新規手法Complete ENumeration and Sorting for Unlimited Sectors(CENSUS)法を開発し、包括的定量的検討を行った。この結果、脳幹においてはタウ病変はAβから独立して存在し、AD病理の進行に伴って3R型タウの割合が優位になっていくことを示し、結果を論文発表した(Acta Neuropathol Commun 2018 6:1). また、脳切片を用いた多重免疫電顕法の開発に取り組んだ。脳切片上の構造物を、異なるQdotおよび蛍光標識金ナノ粒子で蛍光標識した後、3D tiling法により切片の全体像を取得し、さらに明視野でも免疫標識を可視化する処置を加えることで同一部位の蛍光像と免疫電顕像を直接対比する新規手法を開発した(論文投稿準備中)。
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