研究実績の概要 |
水に飽和した鉄の多いかんらん石多結晶体[(Mg1Fe1)SiO4]を用いて、実験温度T = 1200C、圧力P = 300MPaで含水ねじり実験を行い、含水かんらん石多結晶体の岩石組織と変形挙動を調べた。これらの実験結果を基に投稿論文の準備を行った。 かんらん石は上部マントルの主要鉱物であるため、かんらん石の流動特性はマントル流動を考える上で重要である。変形実験から得られた応力・歪速度・粒径を用いて算出された応力指数と粒径指数(n = 5, p = 0)より、試料は転位クリープで変形している事が分かった。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた変形試料の観察より転位クリープ下で変形した岩石に特徴的な組織、かんらん石の強い結晶定向配列、亜粒界の発達、波動消光が観察された。出発・変形試料の赤外分光法 (FT-IR) による解析から、実験温度・圧力条件で試料は水に飽和していることが示唆された。変形試料のかんらん石の格子定向配列 (LPO) は、温度・圧力・含水量一定条件下で歪みと共に変化し、これはかんらん石の3つの主要すべり系(010)[100], (100)[001], (001)[100] の競合によって説明可能であることを示した。このかんらん石LPOの発達により、歪み弱化が引き起こされ、歪速度一定の条件で36%の応力降下を引き起こすことが分かった。本研究で観察された流動特性と組織変化の発達は、含水下のマントル流動を考える上で重要な成果である。
|