本研究の目的は、幼稚園3年間で幼児による他児が起こしている対人葛藤場面に対する介入がいかに発達するのかということを明らかにすることである。その目的を達成するために、以下の3点から分析を行った。 ①幼稚園5歳児は他児の対人葛藤場面に介入しても解決に至ることが少ないという事実を踏まえ、それでもなぜ介入を試みるのかということを明らかにした。その結果、幼稚園5歳児は、葛藤を解決することは難しいが、介入児同士が情報収集・意見交換して葛藤を終結しようと努めていたり、介入児が当事者に葛藤の原因を正確に理解させようとしたり、当事者を何とか説得させようとしていた。さらに、5歳児の介入によって、当事者同士の関係修復や遊びの継続などの状況転換が図られていた。これらの結果から、5歳児にとっては、葛藤を解決させること以上に、困難な葛藤場面において、試行錯誤して介入すること自体に意義があることが示唆された。本研究で得られた知見は、「保育学研究2017」に掲載される予定である。 ②他児の対人葛藤場面への介入において、幼稚園3年間で介入児同士がどのように連携していくのかということを明らかにした。その結果、幼児は年齢に伴い、幼児同士の介入が連携するようになり、主体的に葛藤の解消・解決に向けて協同して介入していた。本研究で得られた知見は、「人間文化研究科年報2016」に掲載された。 ③教師が幼稚園3歳児の喧嘩やいざこざなどの対人葛藤場面に、いかに援助しているのかを明らかにした。その結果、教師は幼稚園3歳児の対人葛藤場面において、幼児の発達状況や、課題、他児への影響、仲間関係など様々なことに留意して葛藤状況に応じて、柔軟に援助していることが示唆された。本研究で得られた知見は、日本発達心理学会第28回大会にて発表を行った。
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