研究課題/領域番号 |
14J04896
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
水野 雄貴 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | テクネチウム-99m / イソニトリル / 多価効果 / SPECT / 分子イメージング / RGDペプチド |
研究実績の概要 |
2015年度に実施した実験項目は、①: 99mTc標識効率を向上する配位子基本骨格の探索、②: 多価効果を最大限発揮しうるスペーサ構造の検討、この2点である。 ①の配位子基本骨格の探索に関して今年度は、2座イソニトリル配位子の合成及びその99mTc標識効率の評価を行った。候補化合物群として、リンカー構造の異なる2座イソニトリルを設計・合成し、99mTc標識反応を行ったところ、所期の期待通りイソニトリル配位子と[99mTc]+コアが3対1で反応した[99mTc(CN-R-NC)3]+(R = リンカー構造)の生成を認めた。一方で、その放射化学的収率は期待していたほど高くはならず、その標識収率の低さが新たな問題となった。 以上の結果を踏まえ、2座イソニトリル配位子ではなく、単座イソニトリル配位子を [99mTc]+コアと6対1のモル比で導入する設計の評価も併せて行った。実際に単座イソニトリル配位子を合成し、99mTc標識反応を行ったところ、目的とする [99mTcI(CN-R)6]+を比較的高い放射化学的収率にて得ることに成功した。その収率は上述した [99mTc(CN-R-NC)3]+の収率と比べても有意に高く、1分子の [99mTc]+コアに対し単座イソニトリルを6分子導入する本分子設計が、単一の99mTc標識多価錯体を選択的に作製する上で有用な分子設計である可能性が示された。 ②の多価効果を最大限発揮し得るスペーサ構造の検討では、モデル化合物であるEthylene Dicysteine (EC) 誘導体の合成を進めた。その合成途中で、目的物と分離困難な副生成物の生成が見られたため、精製操作を改良することで純度の高い保護EC誘導体を作製することに成功した。それと並行し、スペーサ構造としてプロリングリシンユニットを有するRGDペプチドの合成も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り、単座イソニトリル配位子と[99mTc]+コアの組み合わせが、選択的な99mTc標識多価錯体の作製に有用である可能性を見出した一方で、その細かい99mTc標識条件検討及び最適な配位子構造の決定には未だ至っていない。 また、スペーサ構造の検討に関しても、モデル配位子の合成に時間を費やし99mTc標識反応には到達しなかった。 以上の結果を踏まえ、「やや遅れている」という評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
99mTc標識効率を向上する配位子基本骨格の探索に関しては、単座イソニトリル配位子と[99mTc]+コアの組み合わせを用いた薬剤設計における、種々の検討を引き続き進める。具体的には、99mTcの還元剤であるSnCl2の濃度、SnCl2及び99mTc還元中間体の安定化を目的として添加されるシステイン及びクエン酸の濃度などである。また、イソニトリルの配位能がイソニトリル近傍の置換基の種類により調整可能であるとの知見から、イソニトリル配位子の構造の最適化も並行して進める。 スペーサ構造の検討に関しては、モデル配位子の合成がほぼ完了したため、今年度は99mTc標識反応を行い、インテグリン陽性細胞と2価RGD標識体の相互作用を速度論的に解析する予定である。
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