原子力プラント等における複雑かつ長大な配管系を迅速かつ効率的に検査する技術として、マイクロ波を用いた配管広域一括探傷技術(クラックレーダー)が提唱されている。本研究は、実機適用に向けた手法の高度化及びその普遍化による当該技術の実現を目的とする。本年度は、長尺配管適用のための伝播マイクロ波の減衰量推定手法の確立およびき裂に対する検査精度の評価、実配管を使用した検証試験を実施した。 マイクロ波減衰量推定手法の確立については、前年度検討より長尺体系における管内マイクロ波減衰量の口径依存性を実験的に評価した。本年度は配管材質の依存性および壁面粗さの影響評価を実施した。材質依存性評価では、真鍮管とSUS製管を用いた実験より、導電率の低い場合には減肉からの反射信号強度が低下し、壁面における導体損失が増大するという理論式との整合を確認した。続いて、減衰推定手法の更なる高度化のため、管表面粗さの影響評価を行った。マイクロ波周波数帯においては表皮深さが極めて小さいため、配管壁面上の粗さが減衰へ影響する可能性がある。そこで、管入口周辺の表面粗さを測定し、表面粗さを考慮した減衰量推定値と実験結果の比較を行った。結果より、実験値と推定値の良好な一致を獲得し、以て当該検査手法における検出信号の伝播距離に対する信号強度減弱量を推定する手法を開発した。さらに、開発した減衰評価手法を用いて単一直管を用いたき裂に対する検出性を評価した。これまではフランジ接続により長尺体系を模擬していたが、き裂からの信号強度はフランジ接続部と同等であるため、検出性の定量的な評価が困難であった。単一直管における試験では、接続部からの信号がないため周・軸方向それぞれのき裂に対して定量的なS/N比を評価可能であり、以て検出範囲の評価が可能であることが確認された。
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