研究課題/領域番号 |
14J04944
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊澤 誠一郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 有機半導体 / 表面修飾 / 界面構造 / 電荷分離 / 電荷再結合 / エネルギー準位 / フッ素化アルキル基 |
研究実績の概要 |
申請者は、有機薄膜太陽電池を高効率化できる理想的な界面構造の構築を目指している。本年度は、1.フッ素化アルキル基が結合したフラーレン誘導体を用いた表面修飾法の開発、および2.表面修飾分子を用いた有機薄膜太陽電池のエネルギー構造制御について研究を行った。 1.有機半導体薄膜表面の官能基修飾法の開発 申請者はフッ素化アルキル基の片末端にフラーレン誘導体を結合させ、反対側の末端にベンジル基、アルキニル基、ヒドロキシル基などの各種官能基を結合させた表面修飾分子を合成した。これら表面偏析分子と、通常のフラーレン誘導体を溶液中で混合し、塗布すると、薄膜最表面に各種官能基が配列することが、XPSなどの表面分析により確認された。これらにより有機半導体薄膜表面の官能基修飾が可能となった。 2.有機薄膜太陽電池のドナー/アクセプター界面のエネルギー構造制御 有機薄膜太陽電池はドナー/アクセプター(D/A)の二種類の半導体材料を接合して作成されるが、発電過程の重要なプロセスがその界面で起こるため、D/A界面の構造が太陽電池性能に大きな影響を与える。そこで本研究では精密な表面修飾手法を用いて構造制御を行い、D/A界面の理想構造の探索を行った。フッ素化アルキル基が結合した二種類のフラーレン誘導体を表面偏析させることで、二層型の有機薄膜太陽電池のD/A界面のエネルギー構造を制御した。太陽電池性能を測定すると、カスケード構造で電圧値、曲線因子が増大し、光電変換効率が大幅に向上した。さらに精密な電荷移動挙動の解析により界面のエネルギー準位の接続により界面近傍での電荷再結合過程が変化し、特にカスケード構造において、D/A界面でクーロン力に束縛されない自由な電荷生成が実現できていることがわかった。これらの結果から、カスケード構造は、太陽電池デバイスの高性能化を実現するための鍵となる界面構造であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では、有機半導体薄膜表面の修飾手法の開発を行い、その手法を用いて界面のナノ構造と有機薄膜太陽電池の電荷移動挙動の相関を調べ、太陽電池を高効率化できる界面構造を見出すことを目指している。当初の予定では、初年度に有機半導体薄膜の表面修飾手法の開発を行い、次年度にその手法を用いた太陽電池中の界面構造制御と電荷移動挙動の精密測定を行う予定であった。実際に本年度では、有機半導体薄膜の表面修飾手法を開発でき、さらに有機薄膜太陽電池を高効率化できる界面構造まで見出すことができた。これらの研究成果は既に投稿論文として2本アクセプトされている。このように本研究は期待以上の成果が得られており、さらに今後の研究の進展が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後展開としては、電荷分離に必要なエネルギー差を小さくしていくことが重要であると考えられる。このエネルギーロスは有機半導体中で発生した励起子の結合エネルギーに由来するため、界面近傍での誘電率や、分子の配向などがそれらの乖離効率に影響を与えると考えられる。来年度は、界面近傍において、それらの性質を制御することで、エネルギーロスを軽減できる界面構造の探索を行っていく。
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