有機薄膜太陽電池はドナー/アクセプター(D/A)の二種類の半導体材料を接合して作成されるが、発電過程の重要なプロセスがその界面で起こるため、D/A界面の構造が太陽電池性能に大きな影響を与える。そこで申請者は光電変換プロセスを高効率化するための理想的な界面構造の構築することを目指している。 その目的の下で、一年目には新規有機半導体薄膜表面の修飾手法の開発を行い、その手法を用いて界面のナノ構造と有機薄膜太陽電池の電荷移動挙動の相関を調べた。界面のエネルギー構造をトラップ構造、カスケード構造と制御し太陽電池性能を測定した結果、界面第一層のエネルギー構造は光電変換過程に支配的な影響を与えることがわかった。さらにカスケード構造という電荷再結合を抑制し、電荷分離を促進できる光電変換にとって理想的な構造を見出すことができた。本年度はさらに、LUMOレベルの異なる4種類のドナーポリマーを用いることで、そのエネルギーレベルが光電変換過程に与える影響について研究を行った。 太陽電池性能を測定した結果、ドナーポリマーのLUMOレベルによらず、カスケード構造においてCT状態が不安定化され、一分子再結合が抑制されることで、VOC、FFが向上した。逆にトラップ構造においてはCT状態が安定化され、一分子再結合が促進されたことで、VOC、FFが低下した。カスケード構造においてドナーポリマーのLUMOが深くなることでJSCが低下した。原因としては、アクセプターとのエネルギー差が小さくなることで励起子乖離効率が低下したためであると考えられる。これらのことから、光電変換過程全体を向上させるためには、カスケード構造において、LUMOのエネルギー差を適切に制御することが重要であることがわかった。
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