研究課題/領域番号 |
14J04971
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
重富 陽介 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 温室効果ガス / レアメタル / 少子高齢化 / ライフスタイル / 家計消費 / 消費者基準 / 産業連関分析 |
研究実績の概要 |
近年GHGプロトコルのScope3や国際標準化機構 (ISO) において、製品や企業活動のサプライチェーン全体で発生する温室効果ガス (GHG) 排出量を定量化する「見える化」の動きが高まっている。このような考え方は消費者基準勘定 (consumption-based accounting) と呼ばれ、これに基づく2005年の日本の国内外GHG排出量のうち、約61%が我々消費者のライフスタイル (家計消費) によって誘発されたことが報告されている (Nansai et al., 2012) ように、家計消費由来の環境負荷排出構造を解析することは重要である。しかしながらIPCCに代表される従来の生産者基準勘定 (production-based accounting) に基づく長期排出シナリオと異なり、上記の消費者基準勘定における国内外の排出を見通した研究は未だに着手されていない。 このような背景から本研究課題では、今後ますます深刻化することが予想される少子高齢化に着目し、今後の日本の家計消費に由来する国内外環境負荷量および資源消費の排出構造を初めて明らかにすることを目的としている。 今年度の結果からは、2005年から2035年における少子高齢化に伴う消費構成に変化によって、消費者基準GHG排出量は4.2% (58万CO2換算トン/年) 減少し、一方同時に誘発される資源国におけるネオジム、コバルト、プラチナの採掘量はそれぞれ10% (33トン/年)、3.2% (144トン/年)、2.8% (0.43トン/年) 減少することが明らかとなった。これらの金属資源はGHG排出量の低減を目的とする低炭素化技術に重要とされるレアメタルの一種である。また、それぞれの排出量および採掘量に対して重要な寄与を示す家計消費需要を、約800部門の詳細さで示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少子高齢化の影響をより詳細に考察するため、世帯数のみならず本研究計画前には考慮できていなかった人口推移もモデルに組込むことで、現状公開されている2035年までの人口動態のデータを反映した家計消費由来の消費者基準GHG排出量および金属資源消費量の構造についてより緻密に推定できた。一方で初年度に完成を予定していた47都道府県に対応したモデル開発は現在進行中であり、その点を考慮して概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在用いている環境産業連関分析モデルの国内需要部門を47都道府県別に詳細化を図ることで、日本の各地域における需要が国内外のサプライチェーンで誘発する環境負荷量およびレアメタル資源依存度の測定を可能とする。次に今後の家計消費由来の国内外GHG排出量に重要な要素となる食品需要を軸とする将来シナリオを数パターン設計し、そのシナリオごとに新規モデルを用いて今後の47都道府県別環境負荷量・資源依存度を推計する。最終的には、各シナリオの需要から生じる廃棄物系バイオマスに対して、環境負荷面や地域経済面 (地域別GDP、雇用等) を踏まえた静脈サプライチェーンの組合せの提示を目指す。
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