mRNA-sequencingとAffymetrix社のExon arrayを用いた網羅的遺伝子発現解析により、角膜内皮特異的な転写因子を38抽出し、このうち、培養皮膚線維芽細胞や培養角膜上皮細胞で高発現だったもの等を除き、角膜内皮特異的な転写因子として11転写因子を同定した。これら11の転写因子のlentivirus vectorを、Invitrogen社のGatewayシステムを用いて作成した。Sanger sequenceにより、open reading frame全長がクローニングできたことを確認した。HEK293FT細胞を用いてウィルス粒子を作成し、10^5/ ml以上の力価が得られた。結膜線維芽細胞と皮膚線維芽細胞に11転写因子を遺伝子導入し、角膜内皮細胞への分化誘導を試みた。まず、11転写因子を同時に導入したが、角膜内皮様の敷石状細胞への形態変化を示さなかった。次に、11個の転写因子のうち、特に角膜内皮細胞で特異性が高く、角膜内皮細胞の発生において重要と報告されている複数の転写因子を導入したが、いずれの転写因子の組み合わせにおいても、角膜内皮様の敷石状細胞への形態変化を示さなかった。しかし、11転写因子は、角膜内皮細胞のマーカー遺伝子として、有望であり、今後の角膜内皮細胞の再生医療に資するものであると考える。
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