研究実績の概要 |
これまでの研究でlong secondary period(LSP)のサイクルに伴って赤色巨星の「色」が周期的に変動していることを可視、近赤外の観測データの解析から明らかにすることができた。その様子は、星が暗くなるに従って色は「赤く」なる、という脈動変光星に見られる性質に似ていた。しかしM型星と呼ばれる星の表面で酸素の含有量の多い星に限って、近赤外波長域のJ-K colorでこれとは逆の振る舞い、すなわち暗くなるに従って「青く」なることを初めて発見した。これは本研究の根幹であるIRSFのデータを使ったことで可能になった発見と言える。このようなLSP現象で見られた天体の「色」の変動を説明するため、二つのモデルを考えた。一つは星周ダストの周期的な生成による減光によって説明を試みるモデル、もう一つは星表面の巨大な黒点によってLSP星の減光と色の変動の説明を試みるモデルである。星周ダストについては先行研究でその存在が示唆されていた。しかし理論的な計算からダストによる減光ではLSP現象を十分に説明出来なかった。LSP星には前述のM型星の他に、炭素の含有量が多い炭素星が見つかっている。巨大黒点のモデルはこの炭素星の変光をうまく説明できた。しかしM型星についてはこのモデルで説明が出来なかった。そのためLSP現象は上の2つとは異なる別の物理現象によるものかもしれない。以上の結果は査読論文(Takayama et al., 2015, MNRAS, 448, 464-483)として出版された。
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