研究課題/領域番号 |
14J05126
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
神谷 健 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ハイデガー / フッサール / 固定指示子 / 形式的告示 / 意味 / 可能性 / 時間 / 存在論 |
研究実績の概要 |
本年度は、意味と対象の関係をめぐる現代哲学の諸議論に対するハイデガー哲学の意義という観点から、1.マイケル・ダメット、2.ジョスラン・ブノワ、3.ヒューバート・ドレイファスらの関連する議論とのその関係を検討した。 1については、ダメットとの関係において、ハイデガーの決断論の目的論的性格を研究した。理念的なものと従来されてきたものの目的論的基礎づけの社会的性格の検討を通じ、ハイデガーの立場が理念的な意味の措定に現象学の難点を見たダメットに反論する材料を与えるのみならず、意味の「客観性」を理念的存在者ではなくその社会性に求めるダメットの立場と親和的でありうることを明らかにした。 2については、意味概念についてのブノワの一連の研究を、『存在と時間』の時間論的構成との関連において検討した。この過程で、フッサールの意味概念の説明に用いられている諸概念の存在論的身分が解明を要すること、また、ハイデガーの意味論がブノワの指摘する意味概念の分裂を解消しうることを発見した。これに応じて、ハイデガーの関連諸議論がブノワにおいて不明瞭に留まる「意味」と「存在」や「可能性」との連関に光を当てうるものであることが明らかとなった。 3については、H.ドレイファスとCh.スピノザによる、ハイデガーの形式的告示を固定指示として解釈し、これを通じて本質主義的実在論を擁護する試みを検討した。この作業により、両者の固定指示概念が標準的なそれと異なり、フェレスダールの近年の諸論文に見られるインフォーマルなそれに依拠したものであり、これがハイデガーの形式的告示の性格と方法論的意味と整合せず、形式的告示の解釈としては標準的な固定指示概念を用いた方が有効であることを示した。これにより、ハイデガーの方法論的概念と現代言語哲学・論理学との関係づけが持ちうる含意の一部について、具体的な解明を与えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
意味と対象の関係をめぐる現代哲学の諸議論に対して、ハイデガー哲学が持つ意義を明らかにするという本研究の目的のために必要な作業を、当初から予定していた三つの互いに連関した側面から順調に進めることができた。ブノワによるフッサールの意味概念の解釈という文脈においてハイデガーの主著の時間論と意味論が与えうる解明の発見や、形式的告示の可能世界意味論との親和性の確認は、可能性と意味の連関という現代言語哲学・論理学の中心的問題とのハイデガー存在論の接続への道を開くなど少なからぬ意義を持つものであり、研究は当初の計画以上に進展しているとも言えるであろう。とはいえ、研究成果の公表については遅れが生じていることを踏まえれば、全体として見ればおおむね順調に進展している、という評価が適切と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果の公表を進めると同時に、意味と対象の関係の解明における可能性概念や、これに関わるハイデガー存在論の可能的立場についての検討を深めていきたい。また、各々の進展があった研究の三つの側面の相互連関をさらに明確化することで、いっそう有機的かつ包括的な枠組の構築に努めたい。
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