研究課題
1) miR-33bノックイン(KI)マウスの作成と表現型解析hsa-miR-33b配列を、マウスSrebf1遺伝子の、ヒトに相当する同一イントロンへ挿入したマウスを作成した。イントロンへのmiR-33b配列挿入によるスプライシング異常や異常SREBP-1蛋白の発現は認められなかった。通常食8週齢で、KIマウスは野生型と比べ、血清HDL-コレステロール(HDL-C)が約35%低下した。肝臓での標的遺伝子ABCA1のmRNA量、タンパク量の低下から、miR-33bがmicroRNAとして作用した結果と考えられた。マウスはヒトと比較し血清HDL-Cが高い動物として知られる。従来、CETP遺伝子欠失がその一因と考えられていたが、miR-33bが欠失していることも重要な要因の一つと明らかになった(Horie T, Nishino T, et al. Sci Rep. 2014 Jun 16; 4: 5312)。2)ヒト検体におけるmiR-33a/bの解析ヒト血清検体ではmiR-33a/bの安定した定量は不可能で、血清miR-33a/bが極微量であると想定される。パッセンジャー鎖は測定可能であり、特に血清miR-33b*と血清HDL-C量が負の相関を示すことが示唆された。動脈硬化疾患の新規バイオマーカーとして期待される。ヒト肝臓検体では、miR-33a/a*, miR-33b/b*がいずれも測定可能であり、それぞれホスト遺伝子であるSREBF2/1の発現量と相関関係を示した。今後、臨床データとの関連性について検討を行う予定である。3) miR-33a*の解析miR-33欠損マウスは、同時にmiR-33a*欠損マウスでもある。In silico解析等を用いてmiR-33a*の新規標的遺伝子を推定し、miR-33欠損マウスを用いて、生体内での機能を解析を検討している。
2: おおむね順調に進展している
miR-33a/a*, miR-33b/b*の生体内における代謝調節機構を明らかにするためには、適切なモデル動物の確立が必要不可欠である。今回新たに、miR-33bノックイン(KI)マウスの樹立に成功した。KIマウスは、野生型に比べ、血清HDL-C値が約35%低下しており、miR-33bの生体内での脂質代謝へ与える影響の強さが明らかとなった。また、実際にヒトの血清検体において、血清miR-33b*値と血清HDL-C値に負の相関を認めた。これらのデータから、ヒトのメタボリック症候群や動脈硬化性疾患における低HDL-C血症へのmiR-33抑制療法の可能性あるいは、miR-33bによる動脈硬化疾患のバイオマーカーの開発の可能性が開けつつあるのではないかと期待している。以上のことから、現在までのところ、おおむね順調に研究は進展しているものと考えている。
(1)miR-33bと動脈硬化についてこれまで、miR-33欠損マウスや核酸製剤によるmiR-33a抑制実験により、マウスにおいてmiR-33aが動脈硬化形成を促進することが報告されている。しかし、マウスは、ヒトと異なりmiR-33bを持たないため、miR-33bが動脈硬化に与える影響は、明らかとなっていない。miR-33bノックインマウスと動脈硬化モデルApoEノックアウトマウスを用いて、miR-33bが動脈硬化形成に果たす役割と治療介入の余地を検討する予定である。(2)miR-33欠損マウスとmiR-33bノックインマウスの交配miR-33a-/-miR-33b-/-(miR-33欠損)マウス、miR-33a+/+miR-33b-/-(野生型)マウス、miR-33a+/+miR-33b+/+(miR-33bノックイン)マウスの3系統がすでに存在するため、miR-33欠損マウスとmiR-33bノックインマウスを交配し、miR-33a-/-miR-33b+/+マウスを樹立し、4系統のマウスを作成・比較することで、miR-33a/bおよびそのパッセンジャー鎖の生体内における役割をより詳細に検討する予定である。
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