以下の2つの計画にもとづき、研究を進めた。 (1)多光子顕微鏡を用いた、全身性強皮症の皮膚線維化の低侵襲診断技術とその定量評価系の確立 前年度に確立した解析方法に基づいて、乳房外パジェット病の皮疹の三次元的形態の可視化を進めた。前年度の間に、乳房外パジェットの皮膚病変を立体的に解析することで、これまで不可能であった、病変の辺縁の詳細かつ広範な部分に亘る形態を観察できるようになっていたが、さらに検体数を増やし、一般的な腫瘍辺縁の形態の理解を進めた。その結果、全ての症例において病変の辺縁がこれまで予想されてきたよりも整っていることを見出した。一部の症例では辺縁から離れて小さな病巣が存在するという、特異な進展様式が示唆された。さらに、臨床的に観察不可能な病変の境界線を可視化し、その境界線が、観察しえた限り、他の病変と同様の形態をしていることを見出した。以上の内容を投稿準備中であり、次年度に投稿予定である。次年度の間には、これらの特殊な病変と通常の病変とを区別できるマーカーの検索を行う予定である。具体的には、細胞の遊走に関わる分子について、網羅的に免疫染色を行うことを検討している。仮にこれらの細胞に特異的に発現する分子が同定された場合、臨床的に、通常の病変よりも注意深く扱うべき病変の同定などに応用できる可能性がある。本来の研究予定であった強皮症については、疾患モデルであるブレオマイシン誘発強皮症マウスモデルを作成し、前年度に確立した観察技術を用いて観察を行った。次年度に解析を行う予定である。 (2)ヒト皮膚組織の細胞動態ライブイメージング基盤技術の確立 前年度に5-aminolevurinic acidを用いた腫瘍細胞の可視化方法について検討したが、今年度は(1)を主に進めたため、(2)については進展がない。
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