研究課題
本研究はフィヒテ知識学の根本概念、特に中期フィヒテの「絶対知」概念を、現代のフィヒテ主義的哲学である超越論的語用論を通じて現代的に解釈することを目的とするものである。フィヒテの言う「絶対我」「絶対知」「絶対者」といった根本概念は、その説明の難解さや抽象性から、現代の哲学的諸理論にとっては殆ど興味の対象外となっている。しかし、現代のフィヒテ主義的哲学である超越論的語用論を経由すれば、フィヒテの立場を現代の真理論や「知識の哲学」の議論状況に即して解釈することができるというのが本研究の見通しである。今年度は、主として、フィヒテの「絶対知」を「理想的コミュニケーション共同体」の「理想的合意」として解釈することを軸として研究を遂行し、その文脈を視野に入れつつ、カントとフィヒテの共通性および差異の明確化をも行った。(A)超越論的語用論が採用している「真理の合意説」は、対応説、整合説、明証説といった既存の真理論を包括的に統合するが、真理の基準を物自体としての実在との対応ではなく「究極的合意」に求める点で反実在論的であり、カントやフィヒテの超越論的観念論と比較可能であることを明確にした。(B)しかしカントとフィヒテの超越論的観念論には差異も認められ、それは両者の体系全体の方向性の差異に起因するものであるということ、そして超越論的語用論による真理の合意説はフィヒテの方向性を踏襲するものであることを確認した。(C)フィヒテの「絶対知」は、その都度成立している個々の知を統括する作用であると同時に、唯一の知から個々の知へと量化する作用でもあることを確認した。これは経験的な知に超越論的かつ反実在論的な根拠を与えるものであり、現代の文脈に即して表現するなら「知識の超越論的内在主義」と呼ぶべきものになることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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