本年度は多言語使用に関連する言語人類学および社会言語学における概念の議論におおいに進捗が見られた。 まず、社会言語科学会において、言語社会学者、教育社会学者、応用言語学者、社会言語学者、語用論学者と共に、言語イデオロギーに関するワークショップを行った。このワークショップでは、日本の単一言語使用にまつわる人々の意識について論じた。このワークショップ発表では、多言語使用そのものを分析する際の、理論的枠組みについて、考察を進めることができた。また、同月には、日本南アジア学会にて、言語学者、文化人類学者、言語人類学者、社会言語学者の4名で、多言語使用に関するパネル発表を行い、言語と社会の関わりの分析の知見を通して、地域研究の分野においても貢献することができた。 また、年度内に、2件の査読付きブックチャプター(英語による)を執筆した。1件目は、海外の研究者と共著で、東京の社会言語学的状況についての概説を執筆し、特に多言語使用に関しての記述を担当した。2件目では、単著で、日本におけるコードスイッチングやスタイル間の切り替えの研究を俯瞰した。2件とも、2017年内に発行される海外図書への掲載が確定している。 補助期間を通じて積み重ねられた議論と人的ネットワークを生かし、補助期間終了後の2017年度および2018年度の国内・国際学会での、多言語使用に関するパネル発表が計画されている。今後ますます本テーマでの研究が進むことが見込まれる。
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