研究課題/領域番号 |
14J05204
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 愛香 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | シェアバンド / 自励振動 / レオロジー |
研究実績の概要 |
研究実績を火山性微動解析とアナログ実験にわけて以下に報告する。 【火山性微動解析】 伊豆大島1986年噴火時に観測された火山性微動の解析を行った。具体的には山頂噴火から割れ目噴火への遷移に伴う振幅や微動源の時間変化を解析した。その結果、噴火スタイルの変化に伴って火山性微動の特徴にも顕著な遷移が見られた。特に微動源に関しては、割れ目噴火の5日前に割れ目の方向へ移動したことから、割れ目噴火前兆現象が発生していたことが明らかとなった。一方、割れ目噴火後の長周期イベントの解析も行った。長周期イベントは連続的な微動に比べると開始と終了時がわかりやすいため、いくつか抜き出し、それらに共通する特徴を探った。明らかになった共通の特徴としては、卓越周期(1-3秒)を持つことと、山頂直下に微動源が集中していたことである。これらの特徴から、山頂下の火道に存在したマグマ性流体としての挙動に関連した振動現象であると推測される。これは下記に示すアナログ実験との繋がりを示す重要な結果である。 【アナログ実験】 マグマの自励振動が長周期微動等の火山性振動現象に影響を与える可能性を探るため、アナログ実験を行った。実験はフランスのENS de Lyon 物理グループと共同で行い、超音波流速計を取り入れることで従来のレオロジーと液体内部の速度プロファイルの両方の測定を可能にした。実験では液体の流動化過程において応力振動的挙動が観測された。超音波測定から、その振動現象がシェアバンドや壁面滑り等、速度場の変化に起因していることや、現象が水平・垂直方向共に不均一に発生する複雑なプロセスであることを明らかにした。今後は今年度の一連の実験によって得られた結果が、それぞれ火山系では何に対応するのかを考え、応用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一目標であったマグマが持ち得るレオロジー的性質:多価性に起因した自励振動の可能性を探る上で、直接的に結びつく現象がアナログ実験で観測された。これは火山物理分野に留まらず、分野を横断するかたちでフランスの物理チームと共同研究をし、流体の速度場とレオロジーの同時測定を行ったことによって可能となった。この自励振動現象の要因やメカニズムの詳細を明らかにすることで、両方の分野において新しい見解を示すことができた。また、この結果は本研究を最終目標に大きく近づけた。 1986年伊豆大島噴火時の火山性微動解析においては、1986年11月の噴火時についてだけではなく、その後に発生した長周期イベントの解析も行うことができた。このことから、古いフィルムデータをデジタル化して解析することで、今までの先行研究でわからなかったとこを明らかにしようという試みは達成できた。 一方で、本年度から着手する予定であった自励振動モデルの構築はまだ実施されておらず、多少遅れが生じている状態である。しかし実験を詳細に行い、自励振動の出現条件を明らかにしたことで、モデル構築に必要な道筋はできているため、おおむね順調に研究は遂行されていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、本年度のアナログ実験で観測された流体の速度場構造変化に伴う自励振動現象が火山系で起こった場合、どの程度影響力があるかを推測する。この現象の要因となる、せん断変形が狭い帯状領域に集中し、流れ場が粘性の異なる層にわかれるシェアバンドという状態は実験や地質学的にマグマでも観測されているため、マグマの粘性や火山系の火道の半径や長さを実際の値を用いて現象が火山系で起きた場合の規模を推定する予定である。このことは火山で起こるマグマ自励振動の可能性を推定するだけでなく、物理分野と火山分野を結ぶことにも繋がる。また今年度は博士課程3年目となるため、今まで行ってきた研究をまとめる。主に二つの柱として取り組んできたアナログ実験と火山性微動解析のリンク付けをしていく予定である。
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