本研究目的は、モデル実験と火山観測データ解析といった異なる二つの手法によってマグマレオロジーが示し得る非線形的特徴に起因した流動不安定の物理プロセスを探究することであった。 まず、モデル実験ではレオロジーと速度場の関係、いわばレオロジーからミクロへのアプローチを試みた。その結果、本実験では液体の速度場変化にカップリングした応力変動を捉え、その変動現象のメカニズムを提唱すると同時に、発生する内的・外的条件を絞った。このような速度場の変化に起因した液体中での応力変動は、物理分野でも初めて観測されたものであり、極めて重要な結果となる。 一方、火山観測データ解析は1986年伊豆大島噴火時の微動や長周期イベントを中心に行った。それらの解析から、噴火様式の変化と対応して微動や長周期イベントの特徴や振動源が変化を示していたことが明らかとなった。さらにこれら特徴の遷移を元にデータを見直すことで、割れ目噴火が開始する5日前には微動源が割れ目方向へ移動するといった先駆的な現象も捉えることができた。この結果は微動源をリアルタイムで推定することが、噴火活動の流れを追う上では重要であることを示すものである。 最終段階としては、モデル実験の結果と解析結果を元に、一連の1986年伊豆大島噴火期において実験で見られた現象が起こり得る時期とそのメカニズムを提案した。また、二つのアプローチで研究を行うことによって見えてきた今後の課題や目的達成に向けた具体的な研究内容について提案した。
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