研究課題
Chromothripsisとは、一回の染色体の破壊的な粉砕化に起因した、ある染色体に限局性に数十から数百もの遺伝子変異が生じる現象である。Chromothripsisは、ほぼ全てのがん種において2~3%の頻度で生じ、さらに高悪性度のがんの発症と相関があることが示唆されている。しかし、Chromothripsisの発生機構については未だほとんど解明されていない。そこで本研究において、DNA二重鎖切断の誘導に関わる放射線がChromothripsisの発生に関与している可能性について検討を行った。口腔扁平上皮がん細胞株、およびその高転移性株に対し、マイクロビーム細胞照射装置を用いて細胞核内局所にDNA二重鎖切断を誘導し、その後多数のモノクローナル細胞亜株を樹立した。これらの細胞株において生じている染色体構造変化について検討したところ、細胞核内局所に陽子線200発照射した後に得られたモノクローナル細胞亜株のうちの1株において、Chromorhripsis様の複雑な染色体の再構成が検出された。このことから、細胞核内局所における放射線照射がChromorhripsisの発生に関与している可能性が示唆された。これまでのChromothripsisに関する報告は、がん患者由来の臨床サンプルにおいてChromothripsisが生じている、という染色体解析の結果論に留まっており、Chromothripsisが生じる原因、過程について解析を試みている例は少ない。本研究では、放射線による細胞核内局所のDNA二重鎖切断がChromorhripsisの生成に関与している可能性を初めて実験的に示すことに成功した。これは、Chromothripsisが放射線によって誘発される可能性を示唆する、がんの病態発生における新たな知見であると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子細胞遺伝学分野 ホームページhttp://www.tmd.ac.jp/mri/cgen/framepage5.htm
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Oncotarget
巻: 7巻 ページ: 10182-10192
10.18632/oncotarget.7186.