研究課題/領域番号 |
14J05219
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米山 敏広 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 膵臓癌 / バイオマーカータンパク質 / 定量プロテオミクス / ハイスループット定量 |
研究実績の概要 |
本研究では、有力な膵臓癌マーカー候補分子の定量解析を行い、1.CA19-9よりも優れた膵臓癌マーカーを同定し、2.膵臓癌の発症メカニズムを解明することを目的としている。本年度は、24種の膵臓癌マーカー候補に対するLC-MS/MSを用いた定量法を確立し、膵臓癌マーカーとして有用な分子を同定することを目指した。24種の膵臓癌マーカー候補に対して定量法を確立し、第一次スクリーニングとして膵臓癌検体24例、健常者検体18例の計42例について定量解析を行った。その結果、4分子の検出が可能であり、これら4分子の内、2分子が健常者に比べ、膵臓癌の血漿で有意に高値を示した。文献情報で膵臓癌の発症リスクに関連する3分子を加え、第二次スクリーニングとして、健常者 (38例)および膵臓癌患者 (101例)を含む493例の血漿について定量解析を行った。その結果、5分子中4分子で有意に健常者に比べ膵臓癌患者で変動していた。特に2分子に関してはStage IIの早期から膵臓癌患者で有意に変動していたことから、早期膵臓癌診断マーカーとしての有用性が示唆された。 本年度は、次年度に行う予定であった臨床応用に向けたMALDI-MS/MSを用いたスループット性の高い定量技術開発も行った。MALDI-MS/MSはスループット性が高い (1min/rum)一方で、定量性の低さがボトルネックとなっていたが、標的ペプチドの配列を入れ替えたペプチドを内標準とする独自の手法開発により、定量性の低さを改善した。市販血漿をトリプシン消化し、LC-MS/MSおよびMALDI-MS/MSでα-fibrinogenの定量を行った結果、0.1-5μL plasmaの範囲で2つの手法の定量値の差が20%以内となった。以上からMALDI-MS/MSによる高い定量性を持つバイオマーカータンパク質定量が実現することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、24種の膵臓癌マーカー候補分子より早期診断マーカーとして有力な分子の絞込みに成功した。また、次年度に実施予定であった、MALDI-MS/MSを用いたハイスループット定量法の開発にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
絞り込んだ早期膵臓癌マーカー候補に対しては、タンパク質の修飾、断片化、複合体などの構造学的な変化に着目することで、癌の病態時への変化に伴う分子変動機構を明らかとし、マーカーとして有力な領域をさらに絞り込んでいく予定である。
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