研究課題/領域番号 |
14J05223
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星野 太佑 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | C2C12 / 電気刺激 / ミトコンドリア / タンパク質合成 / シグナル分子 |
研究実績の概要 |
平成26年度に実施した研究内容は以下のとおりである。
電気刺激の実験系に必要となる電気発生装置、電流測定器、電気刺激切替器を購入し、細胞への電気刺激の系の構築を試みた。電気刺激による筋収縮の妥当性を確認するために、まず視覚的な筋収縮を確認したところ、電気刺激により筋収縮が起きることを観察した。次に、筋収縮によるCa2+の放出がみられるのか、Ca2+インジケーターを用いて検証した。その結果、パルスの電気刺激が入るごとにCa2+の蛍光が増加することを確認した。最後に、筋収縮により活性化されるシグナル分子のリン酸化から検証した。50V、30ms、1Hzの電気刺激を1時間おこなったところ、pAMPK、pp38、pAkt、pERKのリン酸化が増加したことを確認した。以上のことから、本研究で用いる電気刺激による筋収縮の実験系の妥当性を確認できたと考えられる。
電気刺激のパラメータ(周波数,Hz)を変化させて、シグナル分子の応答を検討した。電気刺激のパラメータは、電圧(volt)、時間 (duration)、周波数 (Hz)である。これらを組み合わせることにより多彩な筋収縮を模すことができる。まずは、in vivoの研究で多くおこなわれているHzの違いをシグナル分子のリン酸化の時系列変化を用いて比較した。刺激は、20V, 5msとし、周波数を1、10、100Hzとした。その結果、ミトコンドリア新生に関わるpAMPKとpp38のリン酸化は、Hz依存的に増加することが明らかとなった。また、pp38は10分、30分をピークにして、低下する波形を示した。同様に、タンパク質合成に関わるシグナル分子であるpAkt、pERKもHz依存的に増加することが明らかとなった。しかし、タンパク質合成の指標となるpS6Kは100Hzの刺激で低下した。以上の結果から、Hzによって筋収縮の強度を変化させることができることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画は、マウス由来のC2C12細胞への電気刺激の実験系を構築することであった。電気刺激による筋収縮の妥当性を、視覚的に筋が収縮するか、蛍光色素を用いたCa2+の放出が起きるか、筋収縮により活性化されるシグナル分子のリン酸化が増加するか、の点から検証した。その結果、5-6日間分化させたC2C12のmyotubesに電気刺激を行うことによって、myotubesが収縮することを視覚的に確認した。次に、蛍光色素であるfluo-8を用いて、Ca2+のイメージングを行ったところ、電気刺激(50V, 30ms, 1Hz)が入ると蛍光色素の光が強く応答することを確認した。さらに、先行研究で増加すると報告されているシグナル分子のリン酸化を確認したところ、50V、30ms、1Hzを1時間の電気刺激によって、pAMPK、pp38、pERK、pAktのリン酸化が増加した。以上のことから、今年度の計画であったC2C12への電気刺激の実験系の構築は達成できたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、C2C12への電気刺激の系を確立した段階である。今後は、どのようにパラメータを設定し、様々な電気刺激パターンをC2C12に行うか、という問題がある。そこで、まずある一定の強度とパターンの電気刺激をおこない、シグナル分子の時系列のデータを取得する。次に、時系列データから、最適なタイムポイントを決定する。そして、時間を固定し、様々な刺激によるシグナル分子の変化を検証する。その後、モデル化のための時系列データを導かれた電気刺激パラメータを用いて、取得する。
|