本研究では大小の粒子から成る2成分剛体球系における、枯渇効果による結晶化を扱ってきた。系の大粒子間には、小粒子によって引き起こされる枯渇効果により、引力を含む相互作用がはたらく。この相互作用を有効ポテンシャルとして計算し、有効ポテンシャルのはたらく一成分系としてモデル化を行う。2014年度はこのモデル化された有効一成分系における結晶化密度を計算した。この時の計算は定性的にシミュレーションと一致したが、定量的には違っている部分もあった。2015年度はこの定量的な違いについて検討をした。2014年度の研究において、この有効ポテンシャルの計算の際、多数の小粒子溶媒のなかに、大粒子を二つだけ沈めた時の大粒子間の有効ポテンシャルを計算した。そして、その有効ポテンシャルを大粒子が多数含まれる系に適用していた。しかし実際は大粒子が多数含まれる系において、3つめ以上の大粒子による相互座用への影響があることが考えられる。そのため、大粒子の密度が比較的高い結晶状態では、枯渇効果による有効ポテンシャルが変化していると考えられる。2014年度の研究において、有効ポテンシャルの違いによって結晶化の挙動が変化する場合があることを示している。今年度検討した大粒子の多体の効果は、有効ポテンシャルに違いを与える可能性が高い。したがって、結晶化密度にも違いを与えることが考えられる。2015年度の後半では、この多体の効果を取り入れ、より定量的な計算ができる理論の構築を行った。その概要は、小粒子溶媒中に2つの大粒子を入れた系に大粒子を追加した時の小粒子の密度変化を考えることである。特に、第三の大粒子の枯渇効果への影響を確率的に取り込むことにより、小粒子の密度変化を考える。新たに得られた小粒子密度における有効ポテンシャルを計算し、それを結晶化密度の計算に取り込むことで、より定量的な議論が可能になると考えられる。
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