研究課題/領域番号 |
14J05247
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
成田 隆明 上智大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ポリケタイド / 走化性 / cAMPシグナリング / 細胞性粘菌 |
研究実績の概要 |
細胞性粘菌Dictyostelium discoideumのもつ新規ハイブリッド型ポリケタイド合成酵素SteelyAは、4-methyl-5-pentylbenzene-1,3-diol (MPBD)を合成している。MPBDはD. discoideumの胞子成熟を誘導するだけでなく、cAMPに対する走化性運動にも関与していると示唆されており、これまでにほとんど報告がない走化性制御物質であると考えられている。本研究はこのMPBDによる走化性制御機構の解明を目的としている。 本年度は、D. discoideumの細胞集合、すなわちcAMPに対する走化性運動に関係しているcAMPシグナリングとMPBDとの関係を中心に、MPBDを合成できないSteelyA遺伝子破壊株 (stlA-株)を用いて解析を行った。stlA-株におけるcAMPシグナリング関連遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより解析した結果、stlA-株ではアデニル酸シクラーゼを含む数多くのcAMPシグナリング関連遺伝子の発現量が低下していることが明らかとなった。また、stlA-株は細胞集合時に細胞外へ分泌するcAMP量が野生株に比べて減少していること、stlA-株の細胞集合および走化性の欠損は細胞外からの周期的なcAMP刺激によって相補されることが明らかとなった。以上のことから、MPBDはD. discoideumのcAMPに対する走化性運動に必要なcAMPシグナリング関連遺伝子の発現制御に関与していると考えられる。 本研究の特色は、MPBDという「低分子化合物」がどのように細胞の走化性を制御しているのかを明らかにする点にある。MPBDという1つの低分子化合物が数多くのcAMPシグナリング関連遺伝子の発現制御に関与しているという今回の結果は、走化性運動のメカニズム解明に向けて重要な知見となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPBDは走化性運動に必要なcAMPシグナリング関連遺伝子の発現制御に関与していることを明らかに出来た。cAMPシグナリング関連遺伝子の発現は、細胞外からの周期的なcAMP刺激(cAMP pulse)によって誘導されることが知られている。MPBD非存在下においても、stlA-株の走化性の欠損はcAMP pulseによって相補されたことから、MPBDはcAMP pulseと同様の経路に作用して関連遺伝子の発現を制御している可能性を示唆することが出来た。以上から、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
MPBDはGタンパク質共役受容体CrlAに結合することで、胞子成熟を誘導するシグナル伝達カスケードが進行すると報告されている。すなわち、CrlAがMPBDの受容体であると示唆されている。そこで次年度は、MPBDは胞子成熟誘導時と同様の受容体(CrlA)を介して走化性運動を制御しているのか検証する。CrlA遺伝子破壊株は走化性に欠損は見られないと報告されているが、この変異株は研究代表者が用いているものとは異なる親株が用いられている。そこで現在、すでにstlA-株と同じ親株由来のCrlA遺伝子破壊株の作製を進めており、この変異株を用いてcAMPに対する走化性を中心とした解析を進めていく予定である。
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