研究課題/領域番号 |
14J05285
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶村 昇吾 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | デフォルトモードネットワーク / 経頭蓋直流刺激法 / fMRI / アイコンタクト / 実行機能 |
研究実績の概要 |
前年度に実施した「右下頭頂小葉(inferior parietal lobule; IPL)に対する経頭蓋直流電流刺激法(transcranial direct current stimulation, tDCS)によるデフォルトモードネットワーク(default mode network, DMN)調節可能性の検討」を受け,IPLの左右差について検討するための実験を実施した。具体的には,同一参加者に実刺激・偽刺激の2条件で実験に参加してもらい,刺激後注意課題中のマインドワンダリング頻度を測定した。その際,実刺激を与える領域について右IPLの群と左IPLの群を設け,それぞれマインドワンダリング頻度に対する影響を比較した。その結果,行動レベルでは右IPLのみでマインドワンダリング頻度の低下傾向が見られた。また,脳画像解析の結果,tDCSによるDMN内情報伝達過程の有意な変化は右IPL刺激でのみ生じ,左IPL刺激によっては生じないことが明らかとなった。さらに,右IPL刺激によって生じたマインドワンダリングの調節は,DMN内情報伝達過程の変化が一部媒介していたが,それのみでは説明できないことから,今後より広い脳機能を対象として,より包括的な解析を行う予定である。 Kajimura et al., 2016, NeuroImageを含む英語論文3報,日本語論文1報が採択された。また,昨年度までで執筆中であった英語論文1報および日本語論文1報を学術誌に投稿し,それぞれ「Cognition」誌,「心理学研究」誌で査読修正中である。 2つの国際学会および6つの国内学会・シンポジウムで発表し,内国内の1研究会・1シンポジウムで優秀発表賞を受賞した。 これまでの成果が評価され,平成27年度京都大学教育学研究科長賞(学業)を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の研究への取組として,1つの心理学調査および2つのfMRI実験を完遂できた点は,想定以上であった。とくにfMRI研究では,統計解析のツールであるSPMを用いた最新の分析手法により,注意制御に関わるデフォルトモードネットワーク,特には頭頂領域を中心とした機構の一部を明らかにした。さらに,そうした取組の成果について,9回の学会・研究会(うち2回は国際学会)で積極的に報告し,うち3つの発表に対して学会賞(優秀発表賞等)と京都大学教育学研究科長賞(学業)を受賞した。加えて,これまでに執筆・投稿した原著論文4本(日本語論文1本および英語論文3本)が本年度中に採択され,残る成果についても現在執筆中(英語論文2本)など,積極的に研究に取り組み,それに伴う成果も得られた。以上のことから,研究は想定以上に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果に関する一般化可能性の観点から『デフォルトモードネットワークと実行機能との関連に関する文化差』を検討する必要が生じている。よって,平成28年度は,欧米人を対象としたfMRI実験の実施を目的として在外研究を実施する。 本研究課題ではこれまでに,非侵襲脳刺激法を用いたデフォルトモードネットワークの機能調節および実行機能の向上可能性について明らかにしてきたが,研究参加者がすべて日本人であったため,一般化可能性について不明である。特に,デフォルトモードネットワーク機能と密接に関わる神経伝達物質「セロトニン」の作用に関わる遺伝子多型分布が欧米圏とアジア圏で大きく異なることから(e.g., Chiao & Blizinsky, 2010, Proc Biol Sci),デフォルトモードネットワーク機能と実行機能との関連,ならびに非侵襲脳刺激法の効果についても文化差がみられる可能性がある。よって,これまでの研究成果の発展性・限界点を示す意味で,欧米圏での在外研究を実施する必要がある。 fMRI測定は,レディング大学心理学科の村山航准教授と共同で実施する。なお,倫理審査はすでに通過しているため,渡英後速やかに実験を開始することが可能である。
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