SOFC(Solid oxide fuel cell)は,空気極と燃料極間の酸素ポテンシャル差で駆動する濃淡電池である。近年,FIB-SEM (Dual beam focused ion beam-scanning electron microscope)を用いてSOFC電極の微構造を3次元的に観察して微構造パラメータを抽出し,数値計算で電極性能を予測する手法が確立されつつある.しかし、その計算に必須な単位反応場あたりの交換電流密度式の情報が乏しい.そこで前年度までに一般的なSOFC空気極材料であるLSM-YSZでの単位三相界面あたりの交換電流密度を正確に見積もった.今年度は,この手法をその他の一般的な電極材料にも適用した.具体的には,一般的な燃料極材料であるNi-YSZの単位三相界面あたりの交換電流密度式とLSCFの単位二相界面あたりの交換電流密度式を定式化した.その結果,従来の式よりも正確に実験結果を再現できる式を導出することができた.さらにこの式を使用することで,空気極,電解質,燃料極で構成される単セル全体の性能を,電極の微細構造データからより正確に過電圧特性を見積もることが可能になった.これにより,電極微構造の最適設計を行う際に重要な基礎的な知見を得ることができたといえる.また,三相界面あたりの交換電流密度を求めることにより,LSMにおける二相界面あたりの反応量を見積もること,そして電極内部の過電圧等に依存するような不純物による劣化現象を詳細に見積もることができるようになった.そこで,LSMパターン電極における二相界面の影響に関する考察とLSM空気極におけるCr被毒現象の時間変化についても研究を行った.これにより電極内部でどのように劣化現象が進行しているのかが明らかになった.
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