研究実績の概要 |
これまでの研究で、骨芽細胞と破骨細胞にInterferon-related developmental regulator1(Ifrd1)が発現し、骨芽細胞においては分化を抑制し、破骨細胞においては分化を促進していること、さらにIfrd1がNF-kBの転写能を増強する働きがあることを明らかにしてきた。 本年度は、Ifrd1全身欠損マウスと組織特異的Ifrd1欠損マウスの作成とそれを用いた骨表現系の解析を行った。また、Ifrd1欠損マウスから調製した初代培養骨芽細胞を用いて、骨芽細胞分化マーカーの発現をReal-time PCR法とWestern blotting法により定量を行った。 その結果、Ifrd1全身欠損マウスでは野生型マウスと比較して骨量の増加が認められた。また、骨芽細胞特異的Ifrd1欠損マウスにおいて、全身欠損マウスと同様の表現型が観察された。野生型マウスとIfrd1欠損マウスから単離した骨芽細胞を用いて骨芽細胞分化マーカーの発現を解析したところ、Type I collagen, Osteocalcin, OsteoprotegerinのmRNA発現量がIfrd1欠損骨芽細胞では有意に増加していた。また骨芽細胞分化のマスターレギュレーターであるRunx2/Osxのタンパク質発現が上昇していた。また、Ifrd1欠損骨芽細胞では、NF-kB p65とbeta-cateninタンパク質のアセチル化が亢進しており、ルシフェラーゼレポーターシステムを用いて各転写因子の活性を測定したところ、Ifrd1欠損骨芽細胞ではNF-kBシグナルの低下とbeta-cateninシグナルの亢進が認められた。 以上の結果より、骨芽細胞におけるIfrd1は、タンパク質の脱アセチル化を介してNF-kBシグナルを亢進させることによる同細胞の分化制御機構を調節するとともに、beta-cateninシグナルを抑制することによる破骨細胞形成支持機構も同時に調節することにより、骨恒常性を協調的に制御している可能性が示唆された。
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