研究課題
本年度は、破骨細胞特異的Ifrd1欠損マウスの作製と、その表現型の解析を行った。また、初代培養骨芽細胞を用いて、Ifrd1の発現制御メカニズムの詳細な解析を行うとともに、Ifrd1による転写因子脱アセチル化機構の詳細なメカニズムを検討した。その結果、破骨細胞特異的Ifrd1欠損マウスでは、Ifrd1全身欠損マウスや骨芽細胞特異的欠損マウスと違い、骨量、骨形成速度および破骨細胞数に変化は認められなかった。一方、破骨細胞特異的欠損マウスにRANKL投与処置を施すと、野生型マウスと比較して骨量の低下の度合が著明に抑制されていた。in vitroの解析において、Ifrd1による転写因子脱アセチル化の機構を検討したところ、Ifrd1欠損細胞では、NF-kB、b-cateninの転写因子と、脱アセチル化酵素HDAC1との相互作用が低下していることが明らかになった。以上の結果より、破骨細胞特異的Ifrd1欠損マウスにおいては、Ifrd1全身欠損マウスや、骨芽細胞特異的欠損マウスと違い、正常時での骨量の変化は認められなかったが、病態時における骨量の低下が抑制されていることが示された。また、Ifrd1はNF-kB、b-cateninのHDAC1との相互作用を調節することにより脱アセチル化を制御し、転写因子の機能を調節することが明らかとなった。このことから、Ifrd1を抑制することのできる薬物は破骨細胞と骨芽細胞の両方に働くことで骨量を増加させる骨粗鬆症の治療により有効な薬の候補になる可能性が考えらる。骨粗鬆症や慢性リウマチなど骨関節系疾患には難治性のものが多いので、本研究が予防や治療に向けた新しい薬物治療理論の展開に大きく貢献することを期待したい。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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