本研究は、イタリアおよびアルプス以北で成立した訴訟法文献(訴訟法書)を分析することによって、中世ローマ・カノン法訴訟の形成過程を明らかにすることを目的とするものである。平成28年度は、4月末までシュテファン・クットナー中世教会法研究所(ミュンヘン)に滞在し、その後帰国し研究を行った。 具体的な実施内容は以下の 3点である。(1) 平成27年度に引き続き、12、13世紀の訴訟法書の史料を4月末まで上記研究所で収集した。 (2) 「命令不服従(contumacia)」という訴訟法上のテーマに関して、ローマ法、カノン法および訴訟法書におけるその訴訟法理論をそれぞれ比較・検討した。それらの史料の検討を通じて、裁判への不出頭者に対するサンクション、不出頭の正当化事由、懈怠判決の要件と内容等に関して、それぞれの法源が有する特徴を考察した。その成果は法制史学会東京部会第263回例会(2016年10月29日)にて報告された。(3) 中世学識法における仲裁法史に関して、学説史を検討した上で13世紀の法学者アゾの『質疑録』を分析し、その研究成果を紀要雑誌(『一橋法学』15巻3号)に投稿した。
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