領野間に渡る情報処理の理解は、脳という全体が1つのシステムとして機能している対象の理解には必須である。その為に、本研究では2光子カルシウムイメージングによる多領野間の情報処理機構の解明手法の開発と行動課題の開発をそれぞれ行う。本年度は、カルシウム濃度感受性タンパク質の改良により可能となった軸索活動の2光子イメージングを拡張し、多領野からの入力を同時に計測可能とする系の構築を行った。2波長同時発振が可能なフェムト秒レーザーを搭載した2光子励起顕微鏡と、異なった励起、蛍光特性を持ったカルシウム濃度感受性タンパク質をそれぞれ別領野へとアデノ随伴ウィルスにより神経細胞へと遺伝子導入する系を組み合わせることで、2色で同時にカルシウムイメージングが可能なことを確認した。また、軸索のような微小構造のイメージングにはプローブの十分な発現と、脳の揺れの影響を抑えるため適切な脳の圧迫が必要であることが明らかとなったため、新たなイメージングウィンドウの開発も行い、1ヵ月を経過しても十分なイメージング品質を保った個体を安定的に作製可能となった。また、新規行動課題を開発するにあたり、これまで使用されてきた運動課題制御プログラムに対し、最適化を行い、制御プログラムの実行速度を1ループあたり1ms程度へと短縮し、時間的な前後性が重要となる課題に対して十分な精度が出るよう改善を行った。
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